January 25, 2006

素数…無益の愉しみ/『博士の愛した数式』から5

黒板


●博士の愛した数式● 小川洋子著
 新潮文庫から抜粋 

P96
この世で博士が最も愛したのは、素数だった。素数というものが存在するのは私も一応知っていたが、それが愛する対象になるとは考えた試しもなかった。しかしいくら対象が突飛でも、彼の愛し方は正統的だった。相手を慈しみ、無償で尽くし、敬いの心を忘れず、時には愛撫し、時にはひざまずきながら、常にそばから離れようとしなかった。

〜中略〜

P98
私が推察するに、素数の魅力は、それがどういう秩序で出現するのか、説明できないところにあるのはないかと思われた。約数を持たないという条件を満たしながら、一個一個は好き勝手に散らばっている。数が大きくなればなるだけ見つけるのが難しいのは間違いないにしても、彼らの出現は一定の規則によって予言するのは不可能であり、この悩ましい気紛れさ加減が、完璧な美人を追い求める博士を虜にしてしまっているのだった。

*****************************

●素数:1とその数自身以外に約数を持たない、1より大きな自然数のこと。

●素数を小さい順に並べると…
 2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97…

●素数の歴史:1644年※にマラン・メルセンヌ※は 2n -1 が素数になるのは、n ≦ 257 では、n = 1, 2, 3, 5, 7, 13, 17, 19, 31, 67, 127, 257 だけであると発表した。残念ながらその主張の一部は誤っていた。

※M・メルセンヌ(僧侶・数学者)
パリの修道院にパスカル父子やデザルグ、ロベルヴァルなどを招き、学問を論じ合う場を提供。後にパリ科学アカデミー(1666年創立)の前身となる。
※1644年
1644年(正保元年)江戸の外堀完成。中国では明が滅びる。

●素数の現在:2005年12月、世界最大の素数探求のための分散コンピューティング・プロジェクト、GIMPSによって、現時点で世界最大とされる素数が発見された。43番目のメルセンヌ素数、230402457-1であり、915万2052桁となる。現在、メルセンヌ素数は43個まで知られている。ただし、メルセンヌ素数としての番号が確定しているものは38番目までであり、

n = 2, 3, 5, 7, 13, 17, 19, 31, 61, 89, 107, 127, 521, 607, 1279, 2203, 2281,
3217, 4253, 4423, 9689, 9941, 11213, 19937, 21701, 23209, 44497, 86243, 110503, 132049, 216091, 756839, 859433, 1257787, 1398269, 2976221, 3021377, 6972593

としたときの Mn がそうである。さらに39番目の候補として n = 13466917 が挙がっており、現在間に素数がないかどうか検証中と言われている。

******************************

私の生年月日はすべて素数から出来ている。

私もそのことが少し特別のように感じられ、誕生日の数字を愛した。数学は美しい整合性と不可思議な偶然によって成り立った宇宙そのもののように感じられることがある。無益の楽しみ…、素数を愛する博士の心が少しだけわかったように思った。

ブログランキング・にほんブログ村へ

moondrop_aco at 04:35│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!ノウハウ・ガイド.小説系 |  映画(な・は行)

トラックバックURL

コメントする

名前
URL
 
  絵文字