August 31, 2006

抱腹絶倒!?ほんとは怖いグリム童話/『ブラザーズ グリム』4

グリム表紙/L

●ブラザーズ・グリム●
●監督;テリー・ギリアム
●出演;マット・デイモン/ヒース・レジャー/モニカ・ベルッチ/
    ジョナサン・プライス/レナ・ヘデ
●時間:;117 分/2005年 アメリカ

劇場で見逃し、劇場パンフレットだけ購入した作品。今頃、レンタルで鑑賞。人気作品はレンタルの新作期間が長かったりするのだが、本作品は比較的早く通常レンタルになっていた。

●あらすじ
貧しい家、幼い女の子が重病の床についている。祖母と少年は、牛を売り、その代金で医者を連れてくるはずの弟を待っていた。ドアが開き、弟が帰ってきた。しかし、弟の手には代金も薬もなく、あるのは幾粒かの“豆”だけ。弟は“魔法の豆”だと言うのだが…。

19世紀初め。ドイツの一部はフランスに占領されていた。まだ夜は暗く、人々は魔法や魔物、魔女を信じていた頃のこと。

水車小屋に魔女が出ると噂される街に、魔物退治を仕事にしている“グリム兄弟”が現れる。村人代表と一緒に水車小屋に現れた恐ろしい魔女を退治した二人は、居酒屋で酒を飲み、街の人々を大宴会。町娘を寝室に連れ込み、上機嫌の兄だったが、弟はどこか浮かない顔だった。そこにフランス兵が現れ、二人は詐欺容疑で逮捕されてしまう。

グリムポスター/S ←クリックで拡大します。

“グリム兄弟”は、弟の調べた民間伝承を元本に、魔女・魔物の噂のある街で仲間に魔物を演じさせては、それを退治するペテン師グループだったのだ。ペテン師グループ“グリム兄弟”の悪事は手下二人が自白し、二人は死刑と言い渡される。しかし、フランスの将軍から、幼い少女たちが行方不明になっている村のことを聞かされ、「事件を解決したら罪は許す」と言われる。フランス兵に連れられ、向かった村は今までの街とは違い、無気味は雰囲気が漂っていた。村人に変人扱いされている娘猟師を道案内に魔女の住むと言う森に向かう一行。さて、子供たちは何者にさらわれているのだろうか?そこで待ち受けているものは、“グリム兄弟”の想像を超えたものだった。
>>>つづきは、DVDでどうぞ!

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この作品はフィクションです(笑)。

実際のグリム兄弟は大学で教授も務めた研究者。※けっして魔物退治を商売にしていたわけではない。

その前提で=魔法も魔物も信じない現実主義の兄、内向的で魔法を信じる弟。弟は薬の替わりに、望みの叶う“魔法の豆”を持ち帰り、病気の妹を殺した(?)過去を持つ。兄はそのことが許せない。ことあるごとに弟を罵る!その兄をアメリカの若手演技派マット・デイモン、内向的な弟をオーストラリア出身、『ロック・ユー』で主人公の騎士を演じたヒース・レジャー(『ブロークバック・マウンテン』ではニューヨーク批評家協会賞、フェニックス映画批評家協会賞ほか多数で主演男優賞を受賞)が演じている。マット・デイモンもヒース・レジャーも堂々の二枚目のはずだが、本作ではほとんどお笑いコンビ!。このグリム兄弟の武勇伝は『オリエンタルラジオ』が演じても良いような(笑)、軽いノリつっこみでどたばた演じられている。ミス・キャストのようであり、とんでもなく豪華なお笑いコンビになっている!。

それもそのはず、監督は一筋縄ではいかない『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』のテリー・ギリアム。「あの!テリー・ギリアムが子供向けのファンタジー?」と当初は怪訝に思ったのだが、ギリアムらしい毒が各所に仕込まれた大人向けのファンタジーになっている。(※アメリカではR13指定)


グリム集合/L

◆◆◆

舞台は陰鬱な空気漂うドイツの田舎。以前、ローテンブルグの街を訪れたことがあるのだが、拷問器具(鉄の処女や、鉄製の奇妙な器具etc.)の博物館があったり、夜中は幽霊を見学するナイト・ツアー(ガイドは魔法使いの扮装)があったり、奇妙な人形芝居を夜遅くまで、1ドリンクチケットで見せたり、この観光名所は、深い中世の香りが漂っていた。ドイツの街の多くは中世の城塞都市が保存されており、街は高い塀で囲まれ、街は広場を中心に放射線状に路地が走る。ローテンブルグは代表的な作りになっており、街の広場は市役所、教会、ハンバーガー屋、有名なクリスマスショップが軒を列ねる。夜遅くまで、明るい光りが満ちているのだが、一歩路地に入れば、“グリム兄弟”の世界が今も息づく中世の街並み。近代道路が繋ぐ街ながら、中世が残る不可思議さ!そのドイツの空気感が、ギリアム独特のブラックな視点で描かれている。どこか悪ふざけに近い悪趣味なのは、テルー・ギリアム監督が伝説的なコメディ・グループ『モンティ・パイソン(Monty Python)』の一員だったことを知れば、合点の行くことだと思う。

◆◆◆

魔物の住処になる大きな森。ドイツには『黒い森』と呼ばれる深い針葉樹の森が広がっている。巨大な杉が茂る森は昼も暗く、奥深く進めば、方位も判らないような“迷いの森”だ。その中に、非キリスト教的なものが潜んでいると思うのは、当然だろう。この“グリム兄弟”では、森の奥深く、“鏡の魔女”が塔の頂上に眠っている。この魔女の住む塔は童話『ラプンツェル』の魔女の住む塔がモデルだが、魔女は鏡に自分の美貌を問う『白雪姫』の継母のようでもあり、眠っている姿は『いばら姫=眠れる森の美女』のようでもある。すべての童話の中の女性=アニマがこの塔に住む美女=魔女なのだ。攫われる少女たちは、『ヘンデルとグレーテル』、『赤頭巾』たちだが、それは物語のブロックでしかない。あくまでテリー・ギリアムの中で、『グリム童話』は翻案され、本来の毒のある民間伝承として、原ヨーロッパ的なイメージが前面に語られる。『グリム童話』の原本を読めば、この童話の持つ闇の深さが判ると思う。※のちほど本の紹介をアップします。

グリムイメージ画

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ネット占いの『インナーストーリー・タロット』と言うものがある。昨年の夏、はまりまくって(笑)、万近いサービス料金を支払ってしまった(泣)。この『インナーストーリー・タロット』は『グリム童話』を題材に、運命を占いのだが、この解釈が面白く、なかなか蘊蓄が深い!それもそのはず、『グリム童話』の世界はユング心理学では、心をさぐるツールとして、多くの心理学者に研究されている。

“深い森”は深層意識、無意識の象徴だ。そこにはさまざまなコンプレックスや、記憶、願望が眠っている。その中心で眠っている美女は、『グレートマザー=太母神』の姿であり、物語では傷付いた太母神(キリスト教以前のヨーロッパの女神)は、魔女となり、邪悪な存在として描かれる。この“グリム兄弟”で描かれる女性たちは皆一筋縄ではいかない、どこか魔術的な香りが漂う。女狩人は、蛙にキスをして道を尋ねる。聖であり、闇である存在、そしてそれは自分の心を映す鏡でもあるのだ。塔に住む美女が『鏡の魔女』だと言うことを忘れてはならない。『グリム兄弟』はあまりの美しさに我を忘れてしまう…。

悪ふざけ好きの奇才テルー・ギリアムが、ヨーロッパの闇をファンタジーの味付けで描いたのがこの“グリム兄弟”。一見悪趣味に見えることも、ユング的な伏線がはり巡らされている。と、思ってみると、なかなかの傑作!しかし、お子ちゃま向けだと思って、夕食の後、小学生や幼稚園の良い子のみんなに見せておくと、確実のトラウマになってしまうだろう(笑)。

面白くて、本当は怖いグリム童話!怖いけど、魔女の王女さまの美しさは必見です!!

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グリム表紙/Sグリム集合/S ←クリックで拡大します。

moondrop_aco at 23:30 │Comments(0)TrackBack(0) 映画(な・は行)  | 洋画系

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