March 27, 2008

不思議で怖い!?サバイバル・ゲーム/『ローズ・イン・タイドランド』5

ローズ/2
































●ローズ・イン・タイドランド●
●監督;テリー・ギリアム
●原作;ミッチ・カリン『タイドランド』(金原瑞人訳、角川書店刊)
●脚本:トニー・グリゾーニ
●主演;ジョデル・フェルランド(ローズ)/ジェフ・ブリッジス(パパ)/
     ジェニファー・ティリー(ママ)/ジャネット・マクティア(デル/
     ブレンダン・フレッチャー(ディケンズ)
●2005年作品 日本公開2006年9/9 イギリス・カナダ映画 117分

『不思議な国のアリス』の翻案だとばかり思っていた作品。ファンタジー作品かと思えば、奇妙で背徳的、毒気に溢れた少女映画だった。主役の少女が可愛いので、他の怖い点はすべてOK!?


●あらすじ

 パパは元ロック・ミュージシャン、一人娘のローズは学校に通っていない。日課はパパのヘロイン注射のお手伝いと、何もしないママのお世話。パパには『不思議な国のアリス』を読んであげたりしている。そんなローズのお友達は、壊れた着せ替え人形たち。人形たちはローズの話し相手だった。

 ジャンキーで過食のママが麻薬性ショク死してしまう。ヘロイン中毒のパパは、動転して、ママをベッドの上で火葬しようとするが、ここはアパート(!)。ローズは「他の人の迷惑になるから止めて!」と火を消す。次ぎにパパが思い付いたのは、ママの死体を放置し、生まれ故郷のテキサスに帰ること。列車、バス、ヒッチハイクで辿り着いたのは、何もない草原の中に放置された廃屋だった。

 この家はローズの祖母、パパの母親の家だった。パパはいつもどおりヘロイン注射で昏睡してしまい、ローズは家の中を探検する。隠し部屋を見つけたローズ、そこにはおばあちゃんの綺麗な服や帽子、カツラなどがあった。おばあちゃんは綺麗な人だったらしい。沢山の遊び道具を見つけ、今度は外へ探検に行くローズ。黒ずくめの異様な女が歩いている。「幽霊!?」…。何もない廃屋、パパはバッドトリップからなかなか寝覚めてくれない。ローズは…。>>>つづきはDVDで!!

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ローズ/1




















 この作品は、パッケージのかわいらしさに騙されてはいけない。ベースになっているのは、少女偏愛系ファンにとって神話的な作品『不思議の国のアリス』。主役ローズを演じたジョエルちゃんは、絵本から抜け出たような超〜可愛い女の子!このローズちゃんの住んでいる世界は、この世であってこの世でない!?境界域どころか、電波系ばかりの大人の中で、ローズは孤軍奮闘!援軍は壊れた着せ替え人形の首(笑)。けっこうどころか、とんでもなくアブナイ世界(汗)。

 『ローズ・イン・タイドランド』は、2005年9月のトロント映画祭に出品、同じ9月にはスペインのサン・セバスチャン映画祭で“The FIPRESCI Jury賞”を受賞している。日本公開に際しては、R15指定になった。この映画のアブナさは、子供には理解不能(?)じゃないだろうか?不健全と言う部分での規制なのか?贔屓目で見ると、金子国義さんや、バルティスの絵の世界が持つ死の香りのするエロスが全体を覆っている。登場人物は皆、社会からスポイルされたマイノリティだ。ギリアム監督の視線は、温かく、そして惨い。

 主人公のジェライザ=ローズと、4体の人形の声を演じたジョデル・フェルランドちゃんは、「普通の女の子を演じられて嬉しい」とインタビューに答えたそうで、やっぱり、お子ちゃまには、この映画のエロスは理解不能なのだ(笑)。良識的な人が見れば、悪魔的な映画だし、その筋の好みの人には堪らない映画だろう。しかし、ギリアム監督の意図は、異様な環境に生まれてしまったしごく健全な少女のサバイバルを描いているのだと思うし、彼もそのようにインタビューに答えている。

◆◆◆

 題名の『タイドランド』は干潟のこと。海と陸の間に広がるこの場所は、現実(陸)と幻想(海)が重なる場所を象徴している。どこまでも広がるように見えるテキサスの草原は、ローズの友達ディケンズには深い海になっている。

 子供の心のまま大人になれないディケンズの穏やかな心象風景に、少女のサバイバルが重なることで、幻想と現実が触れ、世界の破滅をもたらす結末(本当は違うけど)は、コントロール出来ない“イノセンス”の残酷さを感じる。このイノセンスの残酷さと、極端な信仰心による犯罪は、ナイト・シャラマン監督の『ヴィレッジ』にも共通している。しかし、味付けは『チャキー』!ホワイト・プアーの辛い現実が垣間見え、階層社会アメリカの断面を鋭くえぐっている。

 日本人にはキリスト教は皆同じに感じてしまうが、中には聖書の言葉1つ1つをそのままに信じ暮らす人たちがいる。その多くは貧しく、地方で共同体を作っていることが多い。本作の登場人物デルとディケンズはそんな原理的なキリスト教信徒だが、共同体とは隔絶した暮らしをしている。デルの妄想世界の怖さは、多くのアメリカン・ホラーに共通したイメージだ。今月TVで、『セブン』と『羊たちの沈黙』が放映されていたが、あの怖さがこの映画にもある。※ホラー映画として鑑賞した方が楽しめるかもしれない。

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 私的には大好きな映画だが、金子国義さんの『不思議な国のアリス』や四谷シモンさんの少年人形や、キリスト像が怖い人は見ない方が良い。悪夢にうなされること請け合い(笑)ます。

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moondrop_aco at 03:48 │Comments(0)TrackBack(0)洋画系  |  映画(ら・わ行)

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