February 28, 2007
鴨肉とクレソンの鍋の恐怖(?)/『失楽園』森田芳光監督作品

●William Blake "Paradise Lost" Milton
●失楽園●
●監督;森田芳光
●原作;渡辺淳一
●主演;役所広司/黒木瞳/寺尾聰/柴俊夫/星野知子/木村佳乃/平泉成/岩崎加根子/中村敦夫
●1997年制作 日本アカデミー賞/報知映画賞/キネマ旬報賞受賞
ウィリアム・ブレークの『失楽園』のイメージを貼りたいだけです(笑)。
と本音はさておき、夜中TBS系で日本映画『失楽園』を放映していた。初見で、原作も未読。10年前の話題作、当時も今もまったく興味がなかった。結局、最後まで見てしまったが、だんだん怒りがこみ上げた。今さらですが、感想など…。
●あらすじ
久木祥一郎は50歳。大手出版社のやり手編集者だったが、 今は一線を退き、閑職の歴史全集編集室に所属している。松原凛子は38歳。医師の夫とは見合い結婚、子供はいない。凛子は久木の知人のカルチャー・センターの書道講師に招かれる。凛子の美しさに久木は惹かれ、凛子を誘う。夫との結婚生活に飽きていた凛子は、久木の情熱に溺れていく。二人は人目を避け、逢瀬を重ねる。しかし、凛子の夫は興信所に調査を依頼していた。二人の関係が深まるにつれ、周囲から孤立していく。そして二人が取って決断は…。
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恋愛小説がまったく読めない。だからこのジャンルは苦手だ。TV放映だから見たようなものだった。しかし、これは一種のホラーだ。ホラーだと思えば、また違う感想が湧く。これが大ブレークした10年前って、なんだったのだろう?バブル貴族の宴が終わり、太宰の斜陽族ではないが、世の中黄昏に包まれていたのかもしれない。
久木の年齢は、いわゆる団塊世代だ。そして凛子もほぼ第二次ベビーブーム生まれ。お医者さんの渡辺先生は、非常に巧くマーケット・リサーチして作品を書かれている。原作の『失楽園』は累計で300万部も売り上げている。
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題名の『失楽園』は、ミルトンのものが有名だが、主題もテーマもまったく合っていない。渡辺淳一先生は、白樺派の作家有島武郎の心中事件(1923)に想を得て、『失楽園』を書かれたそうだ。有島武郎の代表作『カインの末裔』との語呂合わせのようにキリスト教的な題名をつけたに違いない(独断)。原作の後半はお医者さんらしく(?)、心中事件の死亡例を多数引用されているらしい(うわ〜〜、陰気だヨォ)。しかし、作家は自殺願望が強い!?
監督は森田芳光さん。彼らしい少し暗めのライティングで、久木と凛子の日常を丹念に描いている。話題のベッド・シーンはまったくエロくない。黒木瞳さんの細すぎる肢体とボブカットはどこか中性的だ。役所さんもこういった道を外した役にハマらない。
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映画で描かれる久木と言う人物は、極めて利己的で、とんでもなく非常識だ。久木は凛子の義父の葬式の晩に、ホテルに無理矢理呼び出す。久木が凛子を待っている描写が実に下品(そわそわと廊下を窺い、ベッド廻りを整えている)だ。小説ではどんな表現になっているか不明だが、このシーンで森田監督の皮肉な視線を感じる。
凛子について言えば、単に情欲に溺れて我を見失っているだけだ。二人の間に愛があるか?「ない」、と私は思う。死に向かう愛はない。二人は無一文になっても、ちゃんと生きるべきだ。日本人はどうも心中を美化し過ぎる。結局、どちらかの死に引きづられる殺人でしかない。渋い二枚目俳優と綺麗な女優さんが抱き合って心中するイメージを、ロマンチックな受け止め方をする読者もいるかもしれない。だが、一般人38歳と50歳の心中は如何なものか?台詞から凛子はファザコンのようだし、会社も辞めたし、旦那は鬱陶しい。心中の理由は、面白いこともないし、色々面倒だし、「死んじゃえ」的な安易さが不快だし、怖い。
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と、熱く(?)書いてしまったが、けっこう面白く見ました(笑)。
一番面白かったのは凛子の得意料理『鴨肉とクレソンだけの鍋』。二人で旨そうに食べていた。本当に美味しいのか?謎!!鴨はやっぱり焼きネギと食べたい。
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