May 16, 2008

溢れるような幸せ!!作家の理想像/『ミス・ポター』5

ポター/1





















●ミス・ポター/Miss Potter●
●監督;クリス・ヌーナン
●脚本;リチャード・モルトビー・ジュニア
●出演;レネー・ゼルウィガー/ユアン・マクレガー/ル・パタソン/エミリー・ワトソン
●DATA; 2006年/アメリカ・イギリス/92分

 女の子はみんな大好き!世界で一番愛されるウサギは“ピーター・ラビット”だろう。その作者、ビアトリクス・ポターがどんな女性だったか?ピーターの絵を知っていても彼女のことを知る人は多くない。本作は、19世紀末から20世紀初頭のイギリスにあって、自立と成功を勝ち取ったビアトリクス・ポターの若き日の物語。伝記映画と思ったら、素敵なファンタジーだった。

●あらすじ

1902年、ロンドン。水彩紙に、ブルーの色を試し塗りする。何度も何度も、イメージに合う色を探す。ミス・ポターは31歳になる。綺麗な絹の衣装を着ていても、彼女は変わり者だった。ロンドンの富裕層出身のレディたちは18歳過ぎれば、見合いをして、家柄の見合った男性と結婚する。することと言えば、お茶や刺繍、家事と育児…。ビアトリクスの両親も、彼女をそのように育てたはずだった。

 だが、彼女は今、出版社のドアを叩いている。ミス・ポターは、自分の小さい友人であるウサギのピーターの物語を出版したいと考えていた。本の理想は、完璧に頭の中にあった。本の大きさは小さな子供の手に合わせて、小さいもの。沢山の子供が読むことが出来るように、印刷はモノクロの方がコスト安になるだろう。頬を紅潮させ、本の版元に熱弁を奮うミス・ポターを呆れ顔で見つめる二人の紳士は、ウォーン兄弟、出版社の経営者だ。二人の紳士は、「ウサギの本など、3册も売れれば良いところだ」と内心、思っていた。紳士の退屈そうな様子に、絵を仕舞い、帰ろうとするミス・ポターに、紳士は「我が社から出版しましょう」と言った。意外ななりいきに、大喜びするミス・ポター、横には監視役の付き添いの老嬢ミス・ウィギンが、これまた呆れ顔で彼女の様子を見ていた。ミス・ポターの大切な友人ウサギのピーターのことを多くの人は、ただの道楽だと思っていた。
ポター/2

 帰宅してビアトリクスを待っていたのは、口うるさい母と、理解はあるが、保守的な父だった。出版社の人が来訪することを母に言えば、「商売人は、家に埃を持ち込むのでイヤだ」と母が嫌味を言う。この母の口うるささから、たった一人の弟はワイン商の娘と駆け落ちし、勘当同然、結婚しないビアトリクスを家事手伝いに縛ろうとしていたのも母だった。母のイヤミに対抗しながら、ビアトリクスは自室で絵を描くことにした。いつものように画用紙に向かうと、絵の中の友人たちが動きだす。夏の日、一家で過ごした湖水地方の美しい自然、農場、そこで生きる小さい友人たち、ウサギ、アヒル、カエル…、を思い出していた。ミス・ポターの心は、埃っぽいロンドンから離れていた。

 ミス・ポターの家に、ウォーン社から担当者が来訪した。彼はウォーン兄弟の末息子ノーマン、昨日まで病気の母の世話をしていた。若い彼に、ビアトリクスは、自分の本を作るには経験不足では?と、危惧する。だが、話すうちに彼の屈託のない明るさ、育ちの良さや、熱心さがビアトリクスには感じられた。とく、にウサギのピーターを愛してくれたことが、彼女には好ましく思えた。二人の共同作業、名作“ピーター・ラビット”の出版作業が始まった。>>>つづきはDVDでどうぞ!

ポター/3





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 2006年のクリスマス・シーズンに合わせた、美しくて、素敵な物語だ。主役ミス・ポターに、そんなに美人ではないレネー・ゼルウィガーを配し、ウィーン社の末息子は、良い人を演じたらピカ一!!のユアン・マクレガーを配している。この二人の、心温まる交流は、見ているだけで幸せな気分になる。また、ハイ・ミスでウォーンの姉を演じるエミリー・ワトソンも、時代に反抗する自立心の富んだ女性として、楽しく、強く、好ましい演技を見せている。

 ビクトリアン末期のロンドンのファッション、ビアトリクスの子供時代の洋服、子供部屋の調度、ドール・ハウス、お茶の道具、お菓子などなど、この時代のものが大好きな人には、細部のさまざななものが楽しいと思う。DVDを注文しようかと、思案中…だ。

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ポター肖像
 だが、少しでも、ビアトリクスのことを知っている人は、???になるかもしれない。ある人は、この映画に描かれるミス・ポターは、余りに明るく、陰影が足りないことに気づくだろう。本作『ミス・ポター』は、最高の家族映画の一本だと思うが、多くの映画作品がそうであるように、忠実な伝記映画ではない。

 ウォーン家の末息子との交際、実際は4年間、毎日、文通していたそうだが、映画の中では、ほんの数カ月のように描かれる。また、“ピーター・ラビット”の出版までに経緯は、映画ではウォーン社が最初のように描かれているが、実際はそれ以前に出版は開始されている。

 一番、物足らなさを感じたのは、ビアトリクス・ポターは、日本の南方熊楠のように、菌類の研究をしていたことが描かれていなかったこと。彼女はキノコと藻類が共生関係にあることなど、新発見をしていた。、彼女が女でさえなかったら、植物学者として活躍していただろうし、王立植物園で働いていたかもしれない。

 また、ポター家が、合理的ユニテリアンと言う一派に属していたことも、彼女の人物像に違う光が当るはずだ。一番、違和感があったのは、ポター家の母親、ミセス・ポターが、無理解で無知な婦人のように描かれていたこと。実際のミセス・ポターは、水彩画家として、作品を残している。映画では、父親が風景画家を志したとされている。もし、ビアトリクスが存命なら「あら、ずいぶん違うわね!」と言うかもしれない。

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 10年ほど前、湖水地方を旅行したことがある。お化けが出そうな安ホテル(お風呂も壊れていた)に泊まって、湖畔や農園を散策できた。もちろん、お目当ては、ビアトリクス・ポター、彼女が愛したヒル・トップの自然を体験することだった。彼女が最晩年に過ごして、現在、公開されている小さな農家も見ることが出来た。内緒だけど、道の小石を1つ、ポケットに忍ばせた。

 映画の中の農家は大きいものだったが、私が見た家は、イギリスの田舎にある小さな、小さな、石づくりの家だった。天井も低く、中は質素!!家には、彼女のものだった古いドール・ハウスがあった。見事だったのは、宿根草が主体の夏の花壇!!。自然を活かした配置や、背の高い草花は、日本では見ない、野性的で美しいものだった。きっとビアトリクス・ポターの趣味を残した庭だと思う。この雰囲気はターシャ・チューダと共通している。

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 世界で一億冊以上販売された『ピーター・ラビットシリーズ』、父母の遺産に加えて、その印税で16KM2の土地、農園を保存し、国に寄付。優れたナショナル・トラスト運動家としてのポターの仕事は、どんな賛美も足りないほどだ。ピーターが世界一愛されたウサギなら、ミス・ポターは世界で一番幸せな芸術家だと思う。

 あ〜〜〜、、、また湖水地方にイキタイヨ〜〜!!

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ポターの絵

moondrop_aco at 23:48 │Comments(0)TrackBack(0) 映画(な・は行)  | 洋画系

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