March 11, 2008
読んでも、見ても楽しい江戸から近代!/『刺青とヌードの美術史』

●刺青とヌードの美術史
―江戸から近代へ ●
●著者;宮下既久朗
●出版社;日本放送出版協会 (2008/04)
●DATA;ISBN-10: 4140911093/225頁
●帯;異才の美術史家がタブーの美に挑む!
北斎からアラーキーまで、豊富な図版で辿り直す裸体芸術史。
●DATA;ISBN-10: 4140911093/225頁/ 970円+tax
●内容/出版社からのコメント
日本人の美意識はどう変わったのか? 今日、雑誌や野外彫刻で目にする七頭身美人のヌードとは、全く異なる美の基準に立つ裸体表現が江戸時代に存在した。 美人画や刺青画では肌の白さやきめ細かさが重視され、他方、生人形では日常の姿を写し取る究極の迫真性が追求され、生身の人間性を感じさせる淫靡な裸体芸術が花開いた。
明治期、人格を除去し肉体を誇示した西洋ヌードを移入すると、伝統の解体や再接続を経て、新たな裸体美が模索される。
従来の研究から抜け落ちた美術作品を多数俎上に載せ、日本美術史の書き換えを試みる画期的な論考! (Amazonより引用)
****************************************
今日(5/15)、NHK出版通販部から届いた。これが、すご〜〜く面白い!!
本書は、江戸、明治、大正、昭和と、日本人のヌード観を、美術作品を通して解説している。著者の宮下既久朗さんは45歳、専攻は西洋美術史、日本近代美術史。東京大学大学院終了後、美術館学芸員などを経て、現在は神戸大学大学院で教鞭ととっておられる。
美術史では、中野美代子先生や若桑みどり先生の著作が大好きで、随分美術の見方を教えていただいた。本書『刺青とヌードの美術史』も“図像史”と言う視点で、同じの系譜に属する美術研究書。お二人の女性研究家と違う、男性らしいカルチャー感があり、今まで???だったり、曖昧だった江戸〜明治期の美術土壌が明確になった。
■■■
日本の浮世絵、絵画、陶芸、仏像、これらの多くは、開国後、欧米に輸出され、日本近代化に必要な外貨を稼いでくれた。そんな幕末日本に興味を持ち、多くの外国人が日本を訪れる。
中国ともインドとも違う東洋の辺境が、高度に文明化されていることに、外国人は驚き、また、文明国かと思えば、町中で半裸の庶民が闊歩していることに、また驚くことになる。その気分は、外国人写真家による、風俗写真に刻まれている。小柄で精悍な男性、小柄で手足の小さい女性、彼等の写真に、猥褻の概念はない。
車夫、芸者、侍etc.、長い露出時間に耐えている面貌は、一応に不機嫌そうだ。中には半裸や、着衣を脱いだものも多い。彼等はごく自然で、戸惑っているようにだけ見える。ここらへんの事情を、著者宮下先生は、詳解する。
■■■
西洋は、中世の暗黒期、極度のキリスト教支配で、文化は制限された。原理的聖書主義は、科学の発展は勿論、美術の分野でも、性、肉体に対する、罪悪感は深化していく。肉体は罪の宿る場所だった。ルネサンス以降、優れた人物像が描かれるが、これらの精神はギリシャ、ローマの美しい神々の裸体に属したものだった。一般人の裸肖像画が市民権を得るのは、19世紀以降になる。
少し、話が飛ぶが、今も、ヨーロッパの温泉地は水着着用が原則、まったく入浴していると言うより、温水プール状態なのだが、そもそも入浴習慣さえ、なかった時代もある(イギリスでは、冬、風呂に入ると風邪と引くとされたらしい)。しかし、欧米にも、「裸が健康的である」と言う運動が起る。その提唱者が、インスピレーションを得たのが、日本!だと知ったら、皆、驚くに違いない。
今も、日本の温泉施設のオバサンたちのなんと大らかなこと!!彼女たちは温泉では、江戸時代の裸族になっている(笑)この文化的差異、社会史、美術史は、普通の教科書では教えてくれない。
■■■
画家が何故、ヌードを描くか?と言えば、需要と供給の原則が先行し、次ぎに画家の創作意欲、目の欲のようなものが原動力になっている。優れたヌード絵画に、猥褻感がないのは、画家の目の欲が、美意識と言う回路に繋がっているからだ。これは、高度に文明化された作業だと思う
裸を日常として見ることの出来た画家と、ヌードがタブーの国の画家では、目の欲も、美意識も違うはずだ。裸が日常的だった江戸では、浮世絵は様式化され、髪型、顔だち、着物の柄に興味が向かう。だが、裸が特別だった西洋では、肉体そのものを高貴に神格化することで、市民権を得ている。肉体のエロスを忠実に描くクリムトでさえ、題材は神話的世界から離れない。
■■■
他、幕末見せ物の人気興業だった、生き人形の研究も詳細されている。日本には、ほとんど現存していない生き人形だが、日本のドール文化を語る時に、生き人形の存在は欠かせない。
日常風俗と美術史とリンク作業は、目からうろこで本当に面白い!
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●DATA;ISBN-10: 4140911093/225頁
●帯;異才の美術史家がタブーの美に挑む!
北斎からアラーキーまで、豊富な図版で辿り直す裸体芸術史。
●DATA;ISBN-10: 4140911093/225頁/ 970円+tax
●内容/出版社からのコメント
日本人の美意識はどう変わったのか? 今日、雑誌や野外彫刻で目にする七頭身美人のヌードとは、全く異なる美の基準に立つ裸体表現が江戸時代に存在した。 美人画や刺青画では肌の白さやきめ細かさが重視され、他方、生人形では日常の姿を写し取る究極の迫真性が追求され、生身の人間性を感じさせる淫靡な裸体芸術が花開いた。
明治期、人格を除去し肉体を誇示した西洋ヌードを移入すると、伝統の解体や再接続を経て、新たな裸体美が模索される。
従来の研究から抜け落ちた美術作品を多数俎上に載せ、日本美術史の書き換えを試みる画期的な論考! (Amazonより引用)
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今日(5/15)、NHK出版通販部から届いた。これが、すご〜〜く面白い!!
本書は、江戸、明治、大正、昭和と、日本人のヌード観を、美術作品を通して解説している。著者の宮下既久朗さんは45歳、専攻は西洋美術史、日本近代美術史。東京大学大学院終了後、美術館学芸員などを経て、現在は神戸大学大学院で教鞭ととっておられる。
美術史では、中野美代子先生や若桑みどり先生の著作が大好きで、随分美術の見方を教えていただいた。本書『刺青とヌードの美術史』も“図像史”と言う視点で、同じの系譜に属する美術研究書。お二人の女性研究家と違う、男性らしいカルチャー感があり、今まで???だったり、曖昧だった江戸〜明治期の美術土壌が明確になった。
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日本の浮世絵、絵画、陶芸、仏像、これらの多くは、開国後、欧米に輸出され、日本近代化に必要な外貨を稼いでくれた。そんな幕末日本に興味を持ち、多くの外国人が日本を訪れる。
中国ともインドとも違う東洋の辺境が、高度に文明化されていることに、外国人は驚き、また、文明国かと思えば、町中で半裸の庶民が闊歩していることに、また驚くことになる。その気分は、外国人写真家による、風俗写真に刻まれている。小柄で精悍な男性、小柄で手足の小さい女性、彼等の写真に、猥褻の概念はない。
車夫、芸者、侍etc.、長い露出時間に耐えている面貌は、一応に不機嫌そうだ。中には半裸や、着衣を脱いだものも多い。彼等はごく自然で、戸惑っているようにだけ見える。ここらへんの事情を、著者宮下先生は、詳解する。
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西洋は、中世の暗黒期、極度のキリスト教支配で、文化は制限された。原理的聖書主義は、科学の発展は勿論、美術の分野でも、性、肉体に対する、罪悪感は深化していく。肉体は罪の宿る場所だった。ルネサンス以降、優れた人物像が描かれるが、これらの精神はギリシャ、ローマの美しい神々の裸体に属したものだった。一般人の裸肖像画が市民権を得るのは、19世紀以降になる。
少し、話が飛ぶが、今も、ヨーロッパの温泉地は水着着用が原則、まったく入浴していると言うより、温水プール状態なのだが、そもそも入浴習慣さえ、なかった時代もある(イギリスでは、冬、風呂に入ると風邪と引くとされたらしい)。しかし、欧米にも、「裸が健康的である」と言う運動が起る。その提唱者が、インスピレーションを得たのが、日本!だと知ったら、皆、驚くに違いない。
今も、日本の温泉施設のオバサンたちのなんと大らかなこと!!彼女たちは温泉では、江戸時代の裸族になっている(笑)この文化的差異、社会史、美術史は、普通の教科書では教えてくれない。
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画家が何故、ヌードを描くか?と言えば、需要と供給の原則が先行し、次ぎに画家の創作意欲、目の欲のようなものが原動力になっている。優れたヌード絵画に、猥褻感がないのは、画家の目の欲が、美意識と言う回路に繋がっているからだ。これは、高度に文明化された作業だと思う
裸を日常として見ることの出来た画家と、ヌードがタブーの国の画家では、目の欲も、美意識も違うはずだ。裸が日常的だった江戸では、浮世絵は様式化され、髪型、顔だち、着物の柄に興味が向かう。だが、裸が特別だった西洋では、肉体そのものを高貴に神格化することで、市民権を得ている。肉体のエロスを忠実に描くクリムトでさえ、題材は神話的世界から離れない。
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他、幕末見せ物の人気興業だった、生き人形の研究も詳細されている。日本には、ほとんど現存していない生き人形だが、日本のドール文化を語る時に、生き人形の存在は欠かせない。
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