May 13, 2008

朝鮮王朝末期の混乱を活写した名作!!/『酔画仙』5

酔画仙



●酔画仙●

●監督;イム・グォンテク
●出演;チェ・ミンシク/
    ソン・イェジン/
    アン・ソンギ
●DATA;2002年/韓国/119分


 19世紀に実在した画家“張承業/吾園(1843〜1897)”を描いた作品。張承業=スンオプを演じるのは、『オールド・ボーイ』のチェ・ミンスク。リアルさを追求した演技で、吾園の実像に迫っている。さて、どんな映画かと云うと…。

●あらすじ

 1882年の朝鮮、外国の侵略と腐敗政治、反乱などで国運は傾いていた。

 多くの士人画家・文人(両班階級)の衆目の中、当代きっての人気画家“吾園”が墨痕も鮮やかに、大胆に筆を動かす。煎茶を飲み、待つ間に、絵は見事に出来上がった。吾園の「完成しました」の声に、絵は披露され、人々は口々にその素晴らしさを漏らす。「神の絵だ」、「鬼神が舞うように神秘の趣きが漂っている」、「型破りのようで様式を備えている」そんな褒め言葉に吾園は「私の絵に様式を語るなかれ」と言い放つ。その不遜な態度に、「賤民出身の三文画家が様式を口にするな」「貧しい才能を信じたら人生帽に振るぞ」と鋭い声が飛ぶ。その場を去る吾園の背中は穏やかだった。

 その足で向かったのは、次ぎの酒席だった。料亭の座敷で待っていたのは日本人の新聞記者海浦。彼は吾園の絵を偶然知り、絵の注文をしたいと席を設けたのだ。海浦は記者らしい質問をする。「先生は、賎しい身分の出身と聞きましたが、いつ頃、絵の才能に気づかれたのですか?」。吾園は云う、「天才は若い時から、頭角を表すものだ」。破顔して豪快に笑う吾園だったが、心中は貧しく辛い少年時代を思い出していた。

 貧民窟のような下町で、みじめな姿の幼い少年が男の折檻と受けていた。少年の名はスンオプ、男は物乞いの親方だった。偶然、通りががかった身なりの良い士人が少年を助け、自分の屋敷に連れ帰る。士人の名はキム・ビョンムン、開化派に連なる儒学者だった。何日も経たないうちに、両班の家の生活になじめないスンオプは逃げ出してしまう。彼の画業はまだ始まっていない。>>>つづきはDVDでどうぞ!

●張承業の生きた時代
1863年 高宗即位(11歳の為大院君摂政に)【吾園18歳】
1866〜1872年 丙寅教獄(キリスト教徒八千人処刑)
1870年頃 開化派結成(親日派による独立運動)
1866年 丙寅洋擾(フランス軍と衝突)
1871年 辛未洋擾(アメリカ軍と衝突)
1873年 閔妃一派クーデター大院君追放
1876年 日朝修好条規(日本軍江華島侵入)
1882年 壬午軍乱(大院君クーデター失敗) 
1884年 甲申政変
1894年 甲午農民戦争(農民ほう起勃発)
1895年 乙未事変(王妃閔妃暗殺)
1897年 国号を大韓帝国改称【吾園死去】
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酔画仙
 本作『酔画仙』は、日本の幕末から明治中頃までの朝鮮半島が舞台だ。上記した年表で判るように、末期王朝は、高宗の父大院君と、高宗の妃閔妃一派による権力闘争が繰り返され。外交面でもトラブル続き、保守的な親清派と、改革を目指す親日派が衝突を繰り返していた。

 初見の時は、時代の暗さ、スンオプの人生の重さに、息苦しいものを感じた。前回、紹介した『ニキフォル』が世俗と無縁の画家だとしたら、“張承業”は対極にいる。俗世の荒波に揉まれた彼の人生は苦しみの連続だ。だが、二度、三度と見たくなった。

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 いつもどおり、映画の感想を書こうと思ったが、なんだか気楽に書けない気分だ。何度、書いてもしっくりしない。朝鮮半島は、お隣りの国のことなのに、知らないことが多すぎる!。

 映画の序盤、吾園を尊敬する日本人新聞記者が登場したり、日本軍が漢城(ソウル)市内を行進するシーンも好意的な台詞がかぶる。かつては反日感情も強かった韓国映画で、こんな風な日本人の扱いは珍しく感じた。時代背景を調べると、吾園の精神性の師匠だった儒学者キム・ビョンムンが開化派を名乗ったことで、合点がいった。“開化派”は、日本の文明開化を見習い、清からの独立と近代化を目指す両班グループの名称だった。

 日本は日清戦争の勝利を経て、結果的に大韓帝国を統治することになる。誇り高い朝鮮王朝や、教養豊かな両班、気骨ある庶民のいる朝鮮半島が何故、日本に占領されることになったのか?いつも不思議に思っていた。この映画『酔画仙』を見たあと、年表を見ると、今までの不思議が氷解した。王宮の混乱、内乱、弾圧、大量処刑、一つの国が滅んでいく様子が、画家の生涯を通して、鮮やかに浮かび上がってくる。画業の精進と一緒に描かれるのは、美しい朝鮮の山河、草木、風月だ。歴史がどんなに過酷であっても、山河は雄大であり、花々は限り無く美しい。

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 印象的だったのは、もう一人の主役とも言える学者キム・ビョンムンだ。アン・ソンギの落ち着いた演技は、物語に柔和な品格を与えていた。模写で腕を磨くスンオプに「目で見える筆先よりも、大切なものがある」と「筆より先に志を立てねばならない」と教えている。この言葉は、表現者としてのスンオプを大きく成長させる。絵を描く人には、きっと身につまされる台詞かもしれない。

 リアルに性的なシーンもあり、万人向けとは言えないかもしれない。画家の人生や、細かいエピソードの感想はあえて書かない。これは、見て感じるしかない。※のちほど加筆修正します。

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