June 17, 2008
アメリカの守護天使とは?ミレニアム前の幻想…。/『エンジェルス・イン・アメリカ』

●エンジェルス・イン・アメリカ●
●原題;Angels in America
●監督;マイク・ニコルズ
●脚本;トニー・クシュナー
●出演者;アル・パチーノ/メリル・ストリープ/エマ・トンプソン/
ジャスティン・カーク/パトリック・ウィルソン/
ベン・シェンクマン/メアリー=ルイーズ・パーカー 他
●構成;第1章『悪い知らせ』/第2章『試験管の中で』/
第3章『天からの使者』/第4章『聖なる予言』/
第5章『現実と妄想の果てに』/第6章「天国への階段」
●DATA;アメリカ/公開 2003/12月/ 352分 (全6章)
●受賞歴;エミー賞11部門受賞/ゴールデン・グローブ賞5部門受賞
♪アル・パチーノの真似なんかして ちょっとニヒルに笑うけど♪と歌ったのは榊原郁恵ちゃん。今は奥さんだが、ちゃんと呼ぶのが似合うよネ。なんて、いつもの横道から入ります。
今月のテーマ『黙示録的な世界』に選んだ作品。“ヨハネの黙示録 第6章8節”、第四の封印は解かれ、蒼白き馬に乗った騎士が現れる。この騎士が地上にもたらす災厄は、疫病。本作は『エンジェルス・イン・アメリカ』は、“至福千年紀”を前にした地上の混乱が描かれる。
さて、言葉足らずなあらすじと、まとまらない感想など…。
●あらすじ
1980年代、レーガン大統領時代のアメリカ。ニューヨーク、セントラル・パーク、“ベセスラの泉”。翼を広げた天使ベセスラの像が佇んでいる。
ルイスは恋人のブライアーと一緒に祖母の葬式に参列している。ユダヤ教の長老が祖母の思い出を語る。「リトアニアの小さい村に生まれた彼女は、移民としてアメリカに渡りました。彼女は自分自身だけではなく、リトアニアの大地、空気もともに持ってきたのです。彼女のいるところ、それはどこであれ、故郷の村なのです」。神妙な面持ちで聞いている孫のルイスは同性愛者だった。
ブライアーには、どうしてもルイスに打ち明けなければならないことがあった。葬儀のあと、ブライアーは自分の胸に出来た黒い病変を見せ、「カポシ肉腫と診断された」と、告白する。当時、同性愛者の間に、不治の癌が蔓延しだしていた。
連邦控訴裁判所の首席書記官ジョーは、大物弁護士ロイに、ワシントン司法省への転勤を持ちかけられていた。ロイは、赤狩り時代、さまざまな不正で、多くの人たちを有罪にした悪名高い弁護士だった。今度の転勤話も、ジョーを利用し中央とのパイプを強化するためだった。
連邦控訴裁判所のトイレに寄ったジョーは、号泣する男を見る。男はルイス。昨日、恋人のブライアーに病気を告白され、悲嘆にくれていたのだった。鼻を噛むようにトイレット・ペーパーを手渡すジョーに、ルイスは軽くキスをする。ジョーは何故か嫌ではなかった。
曖昧に返事を留保したジョー。彼は真面目なモルモン教徒、妻ハーバーは、堅苦しいなジョーとの生活に不信感を持ち、精神安定剤依存症になっていた。転勤の話も、ハーバーには納得いかず、「このアパートから離れない」と言い出す。
ブライアーとルイス、ジョーとハーバー。こうして2組のカップルは出会うことになる。そして…。>>>つづきはDVDでどうぞ!
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『エンジェルス・イン・アメリカ』は、アメリカ・HBOが“一大テレビ・イベント”として制作したミニ・シリーズドラマ。DVDのパッケージは、宗教系ファンタジーのようなデザインだが、騙されてはいけない。内容はとんでもなく衝撃的!!、過激で刺激的!!。でも、なんとも優しい気配に満ちている。
天使のイメージだが、日本では絵本やクリスマスのイメージがある。宗教的には保守王国アメリカでは、リアルな存在として認識している人が多い。日本で言えば、東京スポーツ的な新聞では、天使が人助けしたニュースは、珍しくない。守護天使は、誰にでも、どの国にもいて、人間を助け、見守っている。だが、本作の天使は少し違うようだ。
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出演者筆頭に“アル・パチーノ”の名前が並ぶが、彼が主演ではない。本作『エンジェルス・イン・アメリカ』は若い2つのカップルの愛の行方を描いたもの。“アル・パチーノ”、“メリル・ストリープ”、“エマ・トンプソン”と、アメリカ映画を代表する名優、名女優が脇を堅めている。同名の原作はロンドンのナショナル・シアター選んだ“20世紀の最も偉大な戯曲10本”に名を列ね、“ピュリツァー賞”“トニー賞”を受賞している。
物語の重要なファクターにアメリカ人の宗教観がある。ルイスはユダヤ教徒、ジョーはモルモン教徒、ルイスはカソリックだ。他のアメリカ人同様に移住で新大陸に来た。故国なら出会うはずのない三人の共通項は、同性愛者だと言うこと。日本は男性の同性愛にはどこか寛容の空気がある。だが、厳格なユダヤ教、モルモン教では、勿論同性愛は背徳的行為と言うことになる。そんな肩身の狭い彼等の前に、未知の病原体エイズが侵入してくる。1980年代は、まだ有効な治療法も確立していなかった。「エイズは同性愛者だけがかかる癌」と言う、過った風聞もあり、エイズ=天罰のような過った考えもあったようだ。
そのエイズに罹患したブライアーのもとに、神の使者が訪れる。彼(天使は中性)は言う。「我はアメリカの天使、白頭鷲の天使なり。」、「汝に預言の書を与える」。神に選ばれたブライアーは、瀕死状態から元気になっていくが、この天使の迷惑なこと!「愛欲に耽るな諸天使を神が見放した」と奇妙なことを言い出す。本当の天使なのか?エイズに冒されたブライアーの妄想なのか?、定かではない。
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幻覚はブライアーだけではない。やはりエイズに冒されているロイのもとにも多くの亡霊が現れ、彼を悩ます。ジョーの妻ハーバーには、謎の旅行会社プランナーが現れる。現実と幻覚が交差し、物語は不思議な世界を形作っていく。
息子から同性愛者だと告白されたジョーの母は、ユタ州ソルトレイクの家を売って上京、ニューヨーク・モルモン・ビジターセンターに身を寄せる。息子ジョーはルイスと同棲を始め、夫に愛想を尽かしたハーバーは幻想の南極>真冬の公園に住み出す。ついでに焚き火をし、植物園の木を燃やし警官に逮捕される。結局、ジョーの母と妻はモルモン・ビジターセンターに居着いてしまうのだが、ここでハーバーが移民人形の妻と話す台詞が秀逸。「穢い爪で腹を切り裂き、はらわたをえぐり出す。そして、またはらわたを中に入れる。そんな苦痛の中で…、。」神の意志は人知の外、独特の比喩で語っている。このシーンは大事なので、見逃せない。
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ブライアーの親友で、同性愛者の看護士がいる。ルイスが、夜明けの空を「パープル」と表現した時、彼が「あれは、モーブよ。ゲイのくせに」と言う。一番、好きな台詞だ。人生で最悪の状況に陥った時、人は何を求めるのか?誰が救済をもたらすのか?“至福千年紀”は本当に近付いたのか?最後は、奇妙な至福感に満たされる。
共和党をとことんけなす台詞は痛快!シニカルな笑いが好きな人に必見の名作!!
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