アート系
July 16, 2008
BL好き編集者の陰謀(?)か?大ブレイク間近!?/『特集・高畠華宵』プリンツ21

●特集・高畠華宵●
●prints (プリンツ) 21 /
2008年秋号
●出版社;プリンツ21
●DATA;発売日 2008/6/26
●出版社による内容紹介
大正末〜昭和初期にかけて一世を風靡した挿絵画家・高畠華宵の大特集!『日本少年』『少女画報』といった多くの児童雑誌に表紙、口絵、挿絵、また新聞の挿絵、便箋表紙絵などを描き、出版美術の黄金時代を築く。また華宵の存在そのものも全国の少年少女の憧れの的となり、一躍カリスマ的人気を得る。その艶麗な美人画や気高さ、はかなさが宿る美少年の作品は多くの読者を魅了し、今なお鮮やかに輝き続けている。特集では〈美少女〉〈ファッション〉〈美少年〉〈子ども〉〈デカダンス〉の5つのカテゴリーにわけ、華宵作品の魅力を平成にアジャストして徹底分析!寄稿は宇野亜喜良、安野モヨコ、大槻ケンヂ、松谷みよ子と豪華メンバーが集結。大正ロマンと昭和モダンに彩られたら華麗な作品群をご堪能下さい。
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“prints 21”の秋号は【特集・高畠華宵】だった。今年になって高畠華宵関連の本紹介3册目になる。BL好き編集者の陰謀(?)も含め、出版関連に見る華宵の再評価の浪は大きいようだ。本誌の詳しい内容は、編集者からの紹介文に譲るとして、ワヤワヤな感想など。
“prints 21”はA4変型“anan”と同じサイズの大判雑誌。華宵の代表作が大判サイズいっぱいに印刷され、とっても新鮮!!。美少年を描いた“刺青”も大きく印刷され、筆致や、鉛筆らしき下描線もくっきり見ることができる。『刺青』は華宵の代表作、女性っぽい顔だちの妖しい若者(?)が背中の刺青を見せている構図。Tシャツなどに印刷すれば、日本好きの外国人観光客の人気商品になりそうだ。
また、華宵が描いた『少女画報』『日本少年』の表紙絵や、児童雑誌『金の船』の表紙もたくさん掲載されている。表紙絵を見て感じたのだが、『少女画報』の女性像はすべて同じ顔だちで華宵らしい作風。だが、『日本少年』の表紙絵は、何点か写実的なものが混ざっている。これは、日本が軍国化していく中での、国威高揚の表れだろう。写実的な絵には、画家の意向はないようで、少女絵に比べクオリティが落ちる。ファッション性や、廃退的な雰囲気のない華宵の絵は、やや痛い。
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保守的な美術評論家から見たら、高畠華宵の画業はどんな位置にあるのだろう?。
以前なら、“時代と共に忘れ去られた昔の流行画家”と云った評価がだろうか…。それが、今回のように、流行に敏感な美術系専門誌で特集を組まれている。原因は、団塊世代層読者獲得やら、出版企画の疲弊、売れる作家不足がある。考えてみれば、バブル期以降、作家の使い捨てが増え、成功しているのは村上隆氏ぐらいだ。なかなか、ロングセラーを生むような人気画家が登場しない。
CG作家・映像表現作家はどんどん新人が登場し、消えていく。一部に人気のある平面表現作家はマニアックに深化し、一般大衆の深層心理を穿つ才能は発掘されていない。現代美術の作品展を見ても、コンセプト・アートが多く、難解だ。だから、皮相な感想など笑って却下されてしまいそうだ。難解過ぎる作品群、マニア化していく作風、作家名優先で奇矯なものを喜ぶ風潮などなど、現代美術の現場はカオス化している。カオスでは、大衆相手の商売はできない。高畠華宵のような、かつての大作家の作品が再評価されるのは判るような気がする。
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今回の特集を見て、一番感じたのは、晩年の作品群の寂しさ。子供向けの絵本などの作品は、毒を含んだ彼らしい個性が消えていた。時代の寵児、一世を風靡した作家の宿命を感じ、少し寂しい気持ちになった。
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July 15, 2008
何を見るのか?妖しい乙女たち。/『高畠華宵』(らんぷの本)

●高畠華宵 (らんぷの本)
●編者;松本品子
●出版社;河出書房新社
●DATA;発売日 2004年1月/
135頁
国貞えがく乙女もゆけば
華宵ごのみの君もゆく
宵の銀座のオルゴール
昭和3年(1928)
『銀座行進曲』二番から
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本郷の東大北側門近くに、“弥生美術館”がある。弥生は地名で、弥生式土器はここから出土したことから命名された。個人邸宅を改装した美術館は小さいけれど落ち着いた雰囲気で好ましい。この美術館は 明治・大正・昭和初期の挿絵を中心とした、出版美術の専門美術館。設立のきっかけは、創立者鹿野琢見氏が高畠華宵描く「さらば故郷!」に魅せられたことがきっかけだったと云う。
都内で町歩きをする時、この“弥生美術館”周辺が好きだ。抜き身の貝だけを売る魚屋さんや、江戸千代紙のお店など、江戸情緒を残す小さい商店街がある。そんな散歩の終点はいつも“弥生美術館”だ。
大正から、昭和初期、庶民の贅沢が育った時代。妖しい美少女たちが出版の世界で量産される。彼女らは、中性的だ。15〜6歳に見える肢体は、意外に健康的だが、体育の時間は似合わない。“深窓の令嬢”なんて死語もあるが、華宵の描く少女たちは、深窓の奥にはいない。クローンのように同じ顔だちをした彼女たちは、実は秘密に研究室で生まれたのだ。今も絵の中の少女たちは、何も見ていないようで、こちらを見ている。そんな、不可思議な存在感で佇んでいる。
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本書『高畠華宵』は大正末から昭和初期、一世を風靡した人気挿絵画家“高畠華宵”の作品と生涯を紹介したもの。
始めて華宵の絵を見た人は、どこかで見たように感じるかもしれない。多くの少女画家、挿絵画家に影響を与え、現在活躍中の漫画家丸尾末広さんにも、華宵の絵の影響がある。
高畠華宵が世に出たのは、明治44年(1911)。津村順天堂の“中将湯”中将姫の広告イラストから始まっている。意匠を凝らした華宵のモダンな作風は人気を博し、長く津村の仕事をしている。今も売っているツムタのバスクリン、昭和5年、津村順天堂が新発売した日本で最初の入浴剤“バスクリン”のイラストも華宵が描いていた。
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広告の仕事以外も、華宵の仕事は順調だった、大正2年(1913)から講談社の『現代』『面白倶楽部』『婦人倶楽部』『少女倶楽部』『少女画報』『金の船』などの表紙、口絵を手掛けている。大人気になった華宵と講談社の蜜月は突然終わる。大正14年(1925)のことだった。
講談社と絶縁後、だんだん軍靴の音も高くなる世相もあって、華宵の作品は武々しい美少年像が多くなる。当時、実業之日本社『日本少年』連載の“馬族の唄”の挿絵を担当し、華宵の人気は頂点に達する。昭和8年生まれの私の父だが、子供の頃、満州へ渡って馬族になりたかったそうだ(汗)。文字も読めないような子供にまで、“馬族の唄”の人気は知れ渡っていたことになる。
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男性の人気人形作家は、中性的なキャラクターであることが多い。華宵も生涯独身であったり、女性のファッションに興味があったり、繊細な中性的なキャラクターだったらしい。男性が中性化すると繊細になり、女性が中性化すると???になる(笑)
古い作家はどんどん忘れられる。だが、高畠華宵の画業は、100年余の未来に伝えられるかもしれない。日本のオタクカルチャーは、高畠華宵の頃、萌芽が芽生えたと思うのは、私だけだろうか…。
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最晩年は、経済的にも困窮した華宵。兄の援助で養老院に居を構える。そこでは日本画に打ち込んでいたそうだ。自分が描いた『幸福の王子』のように、すべての才能を世の中の少年少女に分け与えた華宵…。芸術と云うギフトは、他のギフトとは両立しないのだろうか。
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July 14, 2008
挿絵文化の徒花?樹陰に隠れて覗き見る!?/『昭和美少年手帖』

●昭和美少年手帖●
らんぷの本
●著者;中村圭子
●出版社;河出書房新社
●DATA;2003年6月14日発行/135頁
●内容;「BOOK」データベースより転載
本書では主に昭和期の少年・少女雑誌のなかに描かれた挿絵の美少年をご覧いただくこととする。さらに、昭和期の文学やまんが、日本・西洋絵画史上にどんな美少年が登場したかを紹介する頁も設けた。さまざまな芸術作品のなかに描かれた美少年たちの魅力を、一冊の本にコレクションした。
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表紙の絵は“高畠華宵”の『刺青』。両性具有的な美少年の目つきが痛い!?。
「日本の腐女子文化はいつ始まったのか?」と問う時、大きく2つの答えがあると思う。1つ目は『源氏物語』、多情、不倫、マザコン、幼女誘拐!?、主人公の光の君は、今なら刑務所の中だ(笑)。2つ目は大正から昭和初期にピークを迎える挿絵ブームの中の美少年たちだ。『美少年趣味』は残念ながら(?)ないので、このジャンル系の本は守備範囲ではなかった。しかし、この『美少年手帖』は、楽しく読めた。本書『美少年手帖』は、“萌語”連発の熱い本ではなく、極めて分析的で、その範囲も挿絵からコミックまで及ぶ。
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“美少年”を倒錯的に捉えれば、同性愛的なイメージが付きまとう。欧米では、“少年愛”は大きな背徳であり、映画『ベニスに死す』や、『オスカー・ワイルド』など、大作家の破滅を描き、美少年映画の代表的な作品だ。だが、日本の“美少年”は少し違う。歴史的に武将の稚児侍や、大寺院の寺小姓など、“衆道”容認の伝統があり、新撰組でも、隊員同志の恋愛は、悩みの種だったらしい。
そんな男同志の恋愛を、潔癖性の女学生が木の影から、そっと覗くようなイメージが、本書の“美少年たち”にはある。実際は、むさ苦しいヒゲの濃い男性同志の恋愛でも、イメージの中のそれは、ヒゲもなく、臭いもなく、綺麗&爽やか!?な、女学生的な妄想に支えられている。
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たとえ、爽やかな(?)妄想でも、描かれる絵は、少々アブない。なんだか物語絵の中の少年たちは、いつも絶体絶命の危機に見舞われている。少女たちはイジメっ子のように、心の中で美少年の危機をハラハラしながら何処か喜んでいるのだ。あはは(笑)、まったく困った趣味だヨ〜。そんな困った趣味から、日本独自とも言える美少年挿絵が大量に生産されている。これは文化としてとても素晴らしいことだ。欲望&妄想が、美術として昇華されているのだから。
美少女と言う存在が童形であるべきであるように、美少年は無垢な存在でなければならない。正統美少年はセーラー服が似合う年頃まで、それ以上の年長さんは却下(笑)。バリエーションで男装の麗人ってのもあるが、これは変装の一種かな?(笑)。手塚治虫の名作『リボンの騎士』には、微妙に美少年系譜の香りがする。その延長線上には、宝塚少女歌劇団がある訳で、日本の女子文化の趣味の世界は、大きな系統樹の中に収まっている。
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前半には、欧米絵画の中の神話的美少年像、後半に、昭和コミックに登場する美少年分析や、図像的に見る美少年の顎の線、目の表現の分析もあり、巾広く美少年を考察している。
美少年を特化したイラスト史として読んでも面白いし、オタク史として読んでも面白い。なにより、収録画が多く、見るだけでも楽しい。巻末に『日本の美少年絵画』と言う評論が掲載されており、これはオタク系美術史に興味のある人には参考になる。
おまけ>>>
●私が選ぶコミックの中の美少年●
●一位>>>カムイ/『カムイ外伝』白土三平
●二位>>>厩戸王子/『日出処の天子』山岸凉子
●三位>>>エドガー/『ポーの一族』萩尾望都
わっ!!、メチャクチャ、古いゾ!!(滝汗)。
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July 08, 2008
可愛いようで、怖いような…“少女コレクション”/『少女古写真館』

●少女古写真館●
ちくま学芸文庫
●著者;飯沢 耕太郎
●出版社; 筑摩書房
●DATA;235頁
発売日 2001/12
●目次
花と乙女
異国少女たち
人形愛の世界
日本少女たち
二人の少女
少女と小道具
他
●著者略歴
1954年、宮城県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、1984年に筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了。写真評論家。著書多数。
本書は、著者、飯沢耕太郎さんが集めた古写真や古ポストカードを編集したもの。被写体は少女。
●内容(※「BOOK」データベースより転載)
いつでもちょっぴり不機嫌で、どうにも手に負えない、小さな存在―少女たち。この捉えどころのない生きものは、幼児から女へと変貌するあわいの瞬間に奇跡のごとくたちあらわれ、やがて幻のようにうつろってゆく。かたや、写真というものは、つねに儚いものの姿を追い求めつづけてきた。だから、まるで捕虫網で美しい蝶をつかまえようとするように、写真が少女という一瞬の姿を捕らえてきたのは当然の成りゆきなのだ。洋の東西を問わず撮りつがれてきた少女写真を厳選し、小さなサイズに閉じ込めた、手のひらに載るコレクション。
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以前から、ほざいているのだが、昨年の今頃から、人形を作り出した。“人形づくり”は、自分の中では禁断の趣味ゾーンに分類されている。この禁断ゾーンは、ADHD傾向のある私としたら、手を出すと絶対に火傷する世界(ハマリ満って意味で)。案の定、火傷している(汗)。大量の資料と、作っては壊すパーツの習作で、一番日当たりの良い部屋が足の踏み場がない。
本書も、資料で購入した1册。本書エピローグに、著者飯沢耕太郎さんと詩人の伊藤比呂美さんが対談されているのだが、その題名が“少女コレクターの憂鬱”!?。彼が女性なら、“可愛いもの好き”ってことで、少女写真をコレクションするのは、まったく問題ないのだが、男性と言う属性を持っている著者は、対談相手の伊藤比呂美さんにきつい質問を連発されている。
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本書は雑多な少女写真を、いくつかのカテゴリーで分類している。普通のビクトリアン朝のポストカードもあるし、個人の家庭で撮影された肖像写真もある。中には、死んだ子供を写した“眠れる子供”も数点あり、可愛いけれど、痛々しい。小さい人たちや、背徳すれすれな気配も漂っているものもある。著者と伊藤比呂美さんは、プライベートでも親しい雰囲気もあり、歯に衣着せぬ質問も読んでいて面白い。この面白さは、私も飯沢さんと似た趣味の男友達たちを知っているからかもしれない。
その男友達たちと著者飯沢さんは10歳ほど年齢の開きはあるが、共通項がある。“大島弓子”なのだ。飯沢さんは“大島弓子”的な世界に「精神的なダメージを受けた時、救われた」と言っている。「男として存在するのに居心地の悪い時がある」とも言っている。彼等も同じことを言っていた。女である私が、男である飯沢さんの気持ちは100%判るはずもないのだが、「居心地の悪さ」と言うのは判るような気がする。
砂糖菓子のようなベビーピンクやペールブルーの衣服、フワフワの髪の毛、掴むと壊れてしまいそうな華奢な手足に、口を開くとマシンガンのような毒舌が!?、、、最後は脱線してしまったが、少女って存在は一種の怪物なのだ。中味に数千年の過去世の記憶の断片を残し、新しい肉体に宿った老練な魂…。これから人生の荒波を航海する前に、凪ぎのような春の海に漂う真っ白い帆船のような存在が少女って言葉の持つ幻想のように思う。
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ビクトリアン朝の写真も可愛いが、日本の明治時代頃、撮影された舞妓さんや、禿(かむろ)の写真なども収録されている。絵を描く人や、人形を作る人には、役立つ1級資料。危ない趣味の人は、購入しないで欲しい!!(汗)。これから、5羽目のうさぎを捕まえにいかないと…。
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July 05, 2008
鯉が龍になる瞬間を目撃!?/『緊急特集 井上雄彦』BRUTUS

●緊急特集
井上雄彦●
●掲載誌;BRUTUS
7/1号 2008
●付録;未公開ラフノート
バカボンドポスター
5月24日〜7月5日まで、東京上野美術館で開催されていた『井上雄彦 最後のマンガ展』の特集号。かつて、ここまで独りのマンガ家に美術館が占領されたことがあっただろうか!?。
この美術展は、マンガ家井上雄彦に美術館の大空間を創作の場として与えている。彼は、入口から出口まで、1つの物語として捕らえ、縦横無心にその実力を発揮している。コミック雑誌の原稿サイズから、壁を被い尽くす大キャンバスまで、井上の筆は龍のように踊っていた。井上雄彦は、超一流の画家としての実力を、保守的な美術界に認めさせたことになる。渾身と言う形容詞が、真実似合う美術展であった。
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この美術展で評価されたように、優れた漫画家の、原画、一枚一枚が貴重な芸術品である。この快挙は、原画を粗末に扱われたり、紛失されたりした漫画家には快挙であり、福音と言える。
絵を描くと言う作業は、武術の修錬のように、長時間の鍛練で磨かれるものと、心の奥底に潜む龍を育てる作業でもある。生まれつき絵の巧い下手は、あるもので、この意味では画才は不平等なものだ。だが、心の奥底に潜む龍を育てる作業は、万人に開かれた登龍門だと言える。
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“少年ジャンプ”執筆時の井上雄彦の絵は、巧いは巧いが、まだ既成作家の影響下にあったように感じられた。だが、究極の武蔵を描く『バカボンド』で、彼の画風は大きく変わっていく。編集者の意図もあったと思うが、表現は自由になり、彼の持ち味であるデザインセンスが十二分に活かされていく。また、日本画の筆を活用するようになり、彼の絵に、何か違う存在が力を貸しているように変容していく。
本誌の中で、「井上ほどの線が描ける日本画家はいない」と書いてある。今の日本画科学生は絹本に肥痩線で描く伝統的な作画法を学ぶのは一時的なもの。あとは大キャンパスの新日本画を描くようになる。横山大観の名作『生々流転』を完全に模写できる画家は大学では育たないかもしれない。井上雄彦の筆は武蔵晩年の絵のように、古典的な趣きがある。彼なら『生々流転』が描けると思った。
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残念ながら、上野の森での『最後のマンガ家展』は終了してしまった。だが、未見の人も本誌『緊急特集井上雄彦』を読めば、美術展の概要は知ることが出来ると思う。画家を目指す美大生!完全保存版!!。
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June 28, 2008
可愛くて新鮮!!元祖“少女漫画家”/『松本かつぢ』

●松本かつぢ●
昭和の可愛い!を
つくったイラストレーター
(らんぷの本)
●編集;弥生美術館
内田静枝
●出版社;河出書房新社
●DATA;126頁/ 発売日 2006/4/11
●目次
1 抒情画ギャラリー
2 漫画セレクション
3 異国のロマンに想いをはせて
4 大好き!かつぢグッズ
5 物語の世界への誘い
画家“松本かつぢ”をリアルでは知らない。弥生美術館での回顧展で知ることになるのだが、時代を感じさせない“かつぢ”ワールドに圧倒されてしまった。(※弥生美術館は、印刷文化の中で、忘れ去られた優れた芸術家の仕事を、再評価、紹介している)
日本は、オタク文化とも別称されるが、出版文化では特異な国。それは、平安時代“信貴山縁起”の昔から、北斎戯画に至るまで、日本人の国民性とも伝統とも言える。特に、大正から昭和初期にかけて、百花撩乱、挿絵文化は黄金期を迎えている。
代表作家として、大正期〜戦前の竹下夢二・高畠華宵や蕗谷虹児などの叙情性の強い一群。戦後の武井武雄・中原淳一や、松本かつぢなど、欧米文化の影響を受けたスタイリッシュなものまで、多彩で優れた芸術家を輩出している。“松本かつぢ”は、黄金期の最後を飾るに相応しい。彼の画業は、物語絵から、少女漫画、イラスト、キャラクラーグッズまで展開される。“松本かつぢ”の画業と商業の一致、今日的で、普遍性のある画家なのだ。
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表紙に描かれた少女の名前は“くるくるクルミちゃん”。日本の少女キャラクターの元祖的な女の子だ。我が家にはなかったが、このキャラクター食器は、今ならアンパンマンやキティちゃんのように、多くの家庭で愛された。(※“松本かつぢ”は、まだ復興もままならない昭和21年、銀座でグッズショップをオープンしている。)
クルミちゃんを見て、手塚治虫のウランちゃんや横山光輝のサリーちゃん、赤塚不二夫のアッコちゃんの原型を見ることが出来る。大きな目に、ショート・カット、ミニスカートと足首の太い足、これらは少女キャラクターの鉄板要素だ。また、かつぢ的筆致やファッション・センスは、今見ても褪せることなく、高野文子さんの描くレトロ風作品にも、濃厚な影響を残しているように感じた。
多くの漫画家に影響を残したのも当たり前で、松本かつぢさんは、日本で最初の少女漫画家でもある。記憶に新しい2008年3月7日、漫画家上田トシコさんが90才の天寿を全うされた。その上田トシコさんの師匠が“松本かつぢ”さん。本書で、上田さんが寄稿されているが、田辺水泡さんの弟子だった長谷川町子さんも、松本かつぢさんの教えを請うたと言う。
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松本かつぢさんは、明治37年生まれ。本書に、かつぢさんの若い頃の写真が掲載されている。これが、トンデモなく素敵!!俳優の榎木孝明さん似のハンサムボーイ!!。神戸生まれで神田育ち、銀座で仕立てた高級スーツを着こなし、余りの恰幅の良さに、ヤクザモノも挨拶をしたそうだ。住まいは二子玉川、渋谷南平台のお屋敷!?、かつぢ先生は、良き父として、たくさんの子供達に囲まれ、幸せな家庭人でもあった。
芸術家は肺病だったり、複雑な境遇だったり、不幸せなイメージが付きまとう。だが、かつぢ先生の周囲は、子供たちの笑いが溢れ、常春のような気配が漂う。「天は二物を与えず」なんて、嘘っぱちで、天からのギフトは大抵、一極集中するものだ。その楽しい様子は、本書の中で、ご長男で彫刻家“二森騏”さんが文章を寄せられている。
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Amazonで検索したのだが、松本かつぢさんの画集は本書以外、ぬりえの本があるだけだった。このような優れて画家の作品は、もっと紹介されるべきだ。“松本かつぢ”の本格的な画集を待ちたい。(公式HP【松本かつぢの世界】 http://katsudi.com/katsudiinfo1.html)
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June 04, 2008
綺麗で怖い!?韓国発の美術入門書/『ファム・ファタル 妖婦伝』
●ファム・ファタル―妖婦論●
●著者;イ・ミョンオク
●翻訳;樋口容子
●出版社;作品社
●DATA;2007年12月発行/収録図版140点/オールカラー
父親の本棚にフランスの詩集全集があった。甘い愛の言葉の裏には、狂おしい情慾が隠れていたり、懐にナイフを忍ばれるような殺意も秘めていた。究極の愛は血の香り。<<<(照)
そんな過激なことを書くと、良識ある人に眉をひそませてしまうかもしれない。書名の『ファム・ファタール』は、そんな危うく美しい女性の総称だ。“運命の女”、間違っても、「私は、彼の運命の人になりたいの」なんて使い方をしてはいけない。さて、どんな本かと云うと…。
●内容
1,残酷 サロメ/メディア/スフィンクス 他
2,神秘 イブ/モナリザ/パンドラ/セイレン 他
3.淫蕩 マリリン・モンロー/オンファーレ/デリラ 他
4.魅惑 ヘレネ/ヴィーナス/フィリス/フリュネ 他
*********************************

著者のイ・ミョンオクさんは韓国在住の美術史学者。現在、ザビナ美術館館長を勤められている。そして、“本書『ファム・ファタル―妖婦論』は韓国文学翻訳院が、海外に優れた韓国文学作品を広く知ってもらうための翻訳支援作業のうちの1册に選ばれた書籍で、この年唯一の非純文学作品だったと云う。”(“”=訳者あとがきから抜粋)
各カテゴリーに、すべてボードレール『悪の華』が引用されている。イ先生はあとがきに書かれている。“愛と死、崇拝と嫌悪が入り混じった矛盾する感情を絶妙に詠ったのは詩人ボードレールだ。ボードレールを引用したわけは、ボードレールを除いては一体誰がファム・ファタールを語れるだろうかと考えたからだ。”
■■■
本書の絵画セレクトは、若い女性に好まれるような絵が中心になっている。ラファエル前派、ダンテ・ガブリエル・ロセッティの絵は複数紹介されており、他、バーン・ジョーンズの絵も紹介されている。また構成も、歴史上の人物画や説話絵画に加え、マリリン・モンローも登場させている。衣服を着ていない女性図像がほとんどだが、女性の目で選んだ作品なので、品の佳いファンタジー性のあるものが中心だ。女性漫画家さんが時々扉絵などに、好きな画家の作品のオマージュを描いたりするが、本書の中の絵は、そんな少女マンガの気配がする。
とは云えども、やはり『ファム・ファタル―妖婦論』なのだ。紹介されている逸話は、大衆好みで面白く、刺激的に書かれている。“ファム・ファタール”に関する私の個人的見解と、イ先生の解釈は少し違う。無垢の魔性性と、無知の美貌に、男性の妄想が加わって“ファム・ファタール”は生まれるように思う。明確な意志のもとで、“ファム・ファタール”は生まれないのだ。私的には、旧約聖書外典“ユーディット”は“ファム・ファタル”に入れないと思う。彼女は充分に戦略的だからだ。
■■■
下の画像は、ウォーターハウスの“マーメイド”。セイレンの項に収録されている。人型をした美しい上半身に情欲を掻き立てられても、魚の下半身では恋人には出来ない存在『人魚』。あ〜〜〜、そんな解釈もあるのか〜?、と童話『人魚姫』に毒されている私は、セイレンと人魚をイコールには考えられなかったのだった(笑)。
美術の中のレトロ&クール・ビューティに興味のある人、恋人未満と泰西名画展に行った時(?)、蘊蓄を云いたい男子、優しい美術入門(やや大人向け)としては100点満点。この本を読んだら、若桑みどり先生の本を読むと、もっと美術が面白くなると思う。
オールカラーで2800円!少し高い。
けど、物欲モードで購入しちゃいました(汗)。
※表紙の画像は“リリス/ジョン・コリア画”
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●著者;イ・ミョンオク
●翻訳;樋口容子
●出版社;作品社
●DATA;2007年12月発行/収録図版140点/オールカラー
父親の本棚にフランスの詩集全集があった。甘い愛の言葉の裏には、狂おしい情慾が隠れていたり、懐にナイフを忍ばれるような殺意も秘めていた。究極の愛は血の香り。<<<(照)
そんな過激なことを書くと、良識ある人に眉をひそませてしまうかもしれない。書名の『ファム・ファタール』は、そんな危うく美しい女性の総称だ。“運命の女”、間違っても、「私は、彼の運命の人になりたいの」なんて使い方をしてはいけない。さて、どんな本かと云うと…。
●内容
1,残酷 サロメ/メディア/スフィンクス 他
2,神秘 イブ/モナリザ/パンドラ/セイレン 他
3.淫蕩 マリリン・モンロー/オンファーレ/デリラ 他
4.魅惑 ヘレネ/ヴィーナス/フィリス/フリュネ 他
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著者のイ・ミョンオクさんは韓国在住の美術史学者。現在、ザビナ美術館館長を勤められている。そして、“本書『ファム・ファタル―妖婦論』は韓国文学翻訳院が、海外に優れた韓国文学作品を広く知ってもらうための翻訳支援作業のうちの1册に選ばれた書籍で、この年唯一の非純文学作品だったと云う。”(“”=訳者あとがきから抜粋)
各カテゴリーに、すべてボードレール『悪の華』が引用されている。イ先生はあとがきに書かれている。“愛と死、崇拝と嫌悪が入り混じった矛盾する感情を絶妙に詠ったのは詩人ボードレールだ。ボードレールを引用したわけは、ボードレールを除いては一体誰がファム・ファタールを語れるだろうかと考えたからだ。”
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本書の絵画セレクトは、若い女性に好まれるような絵が中心になっている。ラファエル前派、ダンテ・ガブリエル・ロセッティの絵は複数紹介されており、他、バーン・ジョーンズの絵も紹介されている。また構成も、歴史上の人物画や説話絵画に加え、マリリン・モンローも登場させている。衣服を着ていない女性図像がほとんどだが、女性の目で選んだ作品なので、品の佳いファンタジー性のあるものが中心だ。女性漫画家さんが時々扉絵などに、好きな画家の作品のオマージュを描いたりするが、本書の中の絵は、そんな少女マンガの気配がする。
とは云えども、やはり『ファム・ファタル―妖婦論』なのだ。紹介されている逸話は、大衆好みで面白く、刺激的に書かれている。“ファム・ファタール”に関する私の個人的見解と、イ先生の解釈は少し違う。無垢の魔性性と、無知の美貌に、男性の妄想が加わって“ファム・ファタール”は生まれるように思う。明確な意志のもとで、“ファム・ファタール”は生まれないのだ。私的には、旧約聖書外典“ユーディット”は“ファム・ファタル”に入れないと思う。彼女は充分に戦略的だからだ。
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下の画像は、ウォーターハウスの“マーメイド”。セイレンの項に収録されている。人型をした美しい上半身に情欲を掻き立てられても、魚の下半身では恋人には出来ない存在『人魚』。あ〜〜〜、そんな解釈もあるのか〜?、と童話『人魚姫』に毒されている私は、セイレンと人魚をイコールには考えられなかったのだった(笑)。
美術の中のレトロ&クール・ビューティに興味のある人、恋人未満と泰西名画展に行った時(?)、蘊蓄を云いたい男子、優しい美術入門(やや大人向け)としては100点満点。この本を読んだら、若桑みどり先生の本を読むと、もっと美術が面白くなると思う。
オールカラーで2800円!少し高い。
けど、物欲モードで購入しちゃいました(汗)。
※表紙の画像は“リリス/ジョン・コリア画”
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March 10, 2008
時代の面構え!明治の女性は綺麗!/『歴史読本 2008年4月号』

●歴史読本 2008年4月号●
●出版社;新人物往来社
●発売日: 2008/2/23
●特集 明治女傑伝
市川久米八/荻野吟子/
ラグーザお玉/園部秀雄/
野中千代子/樋口一葉/
長谷川時雨 他
●夢二をめぐる女たち
●宮廷のファッション
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