洋画系

July 10, 2008

傑作!!異世界を往復する“姉力”の物語/『パンズ・ラビリンス』5

パンズラビリンス/1




















●パンズ・ラビリンス●
●原題;El laberinto del fauno/Pan's Labyrinth
●監督;レルモ・デル・トロ
●出演;イヴァナ・バケロ/セルジ・ロペス/アリアドナ・ヒル/マリベル・ヴェルドゥ
●DATA;公開 2006年10月11日/上映時間 119分/
     製作国 メキシコ、スペイン、アメリカ/PG-12指定
●受賞歴;79回(2006年)アカデミー賞(撮影賞/美術賞/メイクアップ賞)
     2006年(第59回)カンヌ国際映画祭出品

 少女映画の名作!!。レンタル店でいつも空箱状態、やっと借りることが出来た。

●あらすじ

 昔、昔、黄泉の国の王女様は、長い長い階段を登り、地上に出る。地上に出た時、余りに明るさに王女はすべての記憶を失ってしまう。残された王様と女王様は、いなくなった王女様が人間に生まれ変わり、いつの日か、また戻ってくると信じ、いつまでも、いつまでも待っていた。

■ ■

 1944年、内戦後のスペイン。独裁者の圧政下、民衆のゲリラ活動は山間部に広がっていた。

 森の中を車列が続く。車の中には、再婚相手のもとに向かう臨月近い母と、少女オフェリアがいた。車中で、気分の悪くなった母は車を止めさせる。車を降り、森の道を歩いていたオフェリアは奇妙な石を見つける。石は道標のように立つ古い神像の目の部分だった。神像に目を戻すオフェリア。像の口から、大きなヘビカゲロウのような虫が現れる。

 山間の駐屯地に到着した二人を待っていたのは、冷酷な軍人ヴィダル大尉だった。大尉は、体調の悪い母を気遣い、車椅子が用意していた。新しい父は、母のお腹の子供にだけ愛情があるようで、連れ子のオフェリアには冷淡だった。駐屯地の裏には森が広がり、古代の遺跡と迷路が残っていた。迷路に向かうオフェリアを止めたのは、大尉の家政婦メルセデスだった。オフェリアは、メルセデスに親しみを感じる。母を診察した村の医師は、「長旅は母体への負担が大きすぎた」と心配するが、大尉は「息子は父の側で生まれるべきだ。万が一の場合、子供を優先しろ」と言う。

 駐屯地の中の一室で、不安な夜を迎えたオフェリア。妖しい物音に眠ることが出来ない。あの森で見かけたヘビカゲロウが…。>>>つづきはDVDでどうぞ!

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パンズラビリンス/2 本作は、この形容詞“グロテスク”な雰囲気の漂うダークなファンタジーだ。『パンズ・ラビリンス』は、子供向けのファンタジーでありながら、R12指定になっている。本来、童話の世界は残酷なものだ。

 森の中に大きく口を開けた地下への入り口。人工洞窟を持った庭、ヨーロッパにはグロッタと呼ばれる庭園様式だ(※澁澤龍彦先生の著書に詳しい)。洞窟の闇から、“グロテスク”と言う言葉が生まれる。暗闇は怖いものだ。洞窟の中の闇に閉じ込められた人間は奇怪な幻想を見ると言う。

 オフェリアの名前に、黄泉の国に妻を迎えにいく吟遊詩人オルフェウスを思い出した。名前から、彼女が現世と冥界を往復する存在だと予感させる。だから、迷路の奥の国は、明るい日の光に溢れた楽園ではないはずだ。オフェリアの故郷は、キリスト教に追い出された古代神の集う国だと思った。

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 アカデミー賞(撮影賞/美術賞/メイクアップ賞)を3つ!も受賞している。だが、映像表現は、古典的だ。陰影深いダル・カラーの画面は優れた絵画のようだ。イメージは、スペインの大画家ゴヤ晩年“黒の時代の連作”のようだし、ギュスターブ・モローの神話絵(人を喰らう一つ目鬼)のような奇怪な怪物も登場する。

 加えて、ルイス・キャロルの『不思議な国のアリス』も、本作のベースに潜んでいた。オフェリアは、アリスのように、深い穴に潜りこんでいく。案内する牧羊神パンは、どこか兎のようだ。また、大尉がいつも懐中時計を眺めているが、彼の仕種は残酷なトランプの女王に仕える白兎のようでもある。

 『パンズ・ラビリンス』は、単にグロテスクで残酷なのではなく、ヨーロッパの伝統的な異世界のイメージを見事に視覚化している。

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 本作では、地底の異世界と、内戦直後のスペインが交互に描かれる。二つの世界は存在しているのに、それを行き来できるのはオフェリアだけだ。物語の前提として、魔法も、パンも、妖精も、皆実在する。“不幸な少女の幻想“と言う、当たり前過ぎる解釈は御法度にしたい。伝統的と言えば、本作のオフェリアは、グリム童話や、他のヨーロッパの昔話のように、3つの試練に見舞われる。巨木に棲む大蛙、手のひらに目を持つ人喰い鬼、最後の試練はもっと過酷なものだった。本当に怖い存在、残虐さを正当化し、平気で人を殺す大尉こそ最大の怪物であり、最後の試練となる。

 最後にオフェリアは、母の胎内に宿った弟を守ろうとする。童話には“姉力”と言う神秘力がある。本作には、もう一人“姉力”を発揮する女性がいる。家政婦のメルセデスも弟を守るために命を掛けている。彼女たちの“姉力”が、大きな悪を滅ぼす原動力になっていた。

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 オフェリアは本当に王女の生まれ変わりだったのか?

 本当のところは謎だ。目の石を拾った少女だったら、誰でもパンの招待を受けれるのかもしれない。物語はハッピーエンドだったのか?、そうであって欲しいと思う。

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パンズラビリンス/3

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June 18, 2008

June/2008/『黙示録的世界の映画』3

ボッシュ/1




















今月はテーマ『黙示録的世界』。

 近年(?)の政府スローガンと云えば、“省エネ&エコ”。地球の資源の枯渇、人口増大、環境汚染などなど、暗い話題に事欠かない。この問題を突き詰めて考えると確実に鬱になる。

 鬱に陥る思考パターンはダブル・バインド。矛盾する2つの考えの狭間に落ち込むと、確実に思考停止に陥る。これに、メタボ撲滅運動まで加われば、くたびれた中年世代は窒息死寸前(?)。「助けてくれ〜〜〜」の声が聞こえる。


ボッシュ/2
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 こんな時代に、
 どんな風に希望を持てば良いのか?

 逆説的に考えちゃお〜!!ってのが、今月のテーマ。過去ログの映画と、最近見た映画の感想、書籍や絵画など、『黙示録的』を考えたいと思います。梅雨で憂鬱なんて!!これに比べれば、「ナンボのもんじゃい!!」って、感じかも…。フ〜〜〜〜、、、(タメ息)。明るい未来を描くため、問題をくっきりさせるのが、鬱脱出法、、、かも(汗)。

●エンジェルス・イン・アメリカ/2003
●アポリカプト/2005
●トゥモロー・ワールド/2006
●アポリカプス 地球最後の日
●エンド・オブ・ザ・ワールド
●オーメン/2006

 画像はヒロニムス・ボッシュ(1450〜1516/オランダ)の『最後の審判』。禁断の知恵の実は、何をもたらしたのか?西欧的思考の底には、戦争と云う終末観がある。これは、コワイ!!

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June 17, 2008

アメリカの守護天使とは?ミレニアム前の幻想…。/『エンジェルス・イン・アメリカ』5

Angels in America/2















●エンジェルス・イン・アメリカ●
●原題;Angels in America
●監督;マイク・ニコルズ
●脚本;トニー・クシュナー
●出演者;アル・パチーノ/メリル・ストリープ/エマ・トンプソン/
     ジャスティン・カーク/パトリック・ウィルソン/
     ベン・シェンクマン/メアリー=ルイーズ・パーカー 他

●構成;第1章『悪い知らせ』/第2章『試験管の中で』/
    第3章『天からの使者』/第4章『聖なる予言』/
    第5章『現実と妄想の果てに』/第6章「天国への階段」

●DATA;アメリカ/公開 2003/12月/ 352分 (全6章)
●受賞歴;エミー賞11部門受賞/ゴールデン・グローブ賞5部門受賞

 ♪アル・パチーノの真似なんかして ちょっとニヒルに笑うけど♪と歌ったのは榊原郁恵ちゃん。今は奥さんだが、ちゃんと呼ぶのが似合うよネ。なんて、いつもの横道から入ります。

 今月のテーマ『黙示録的な世界』に選んだ作品。“ヨハネの黙示録 第6章8節”、第四の封印は解かれ、蒼白き馬に乗った騎士が現れる。この騎士が地上にもたらす災厄は、疫病。本作は『エンジェルス・イン・アメリカ』は、“至福千年紀”を前にした地上の混乱が描かれる。

 さて、言葉足らずなあらすじと、まとまらない感想など…。

●あらすじ

 1980年代、レーガン大統領時代のアメリカ。ニューヨーク、セントラル・パーク、“ベセスラの泉”。翼を広げた天使ベセスラの像が佇んでいる。

 ルイスは恋人のブライアーと一緒に祖母の葬式に参列している。ユダヤ教の長老が祖母の思い出を語る。「リトアニアの小さい村に生まれた彼女は、移民としてアメリカに渡りました。彼女は自分自身だけではなく、リトアニアの大地、空気もともに持ってきたのです。彼女のいるところ、それはどこであれ、故郷の村なのです」。神妙な面持ちで聞いている孫のルイスは同性愛者だった。

 ブライアーには、どうしてもルイスに打ち明けなければならないことがあった。葬儀のあと、ブライアーは自分の胸に出来た黒い病変を見せ、「カポシ肉腫と診断された」と、告白する。当時、同性愛者の間に、不治の癌が蔓延しだしていた。

 連邦控訴裁判所の首席書記官ジョーは、大物弁護士ロイに、ワシントン司法省への転勤を持ちかけられていた。ロイは、赤狩り時代、さまざまな不正で、多くの人たちを有罪にした悪名高い弁護士だった。今度の転勤話も、ジョーを利用し中央とのパイプを強化するためだった。

 連邦控訴裁判所のトイレに寄ったジョーは、号泣する男を見る。男はルイス。昨日、恋人のブライアーに病気を告白され、悲嘆にくれていたのだった。鼻を噛むようにトイレット・ペーパーを手渡すジョーに、ルイスは軽くキスをする。ジョーは何故か嫌ではなかった。

 曖昧に返事を留保したジョー。彼は真面目なモルモン教徒、妻ハーバーは、堅苦しいなジョーとの生活に不信感を持ち、精神安定剤依存症になっていた。転勤の話も、ハーバーには納得いかず、「このアパートから離れない」と言い出す。

 ブライアーとルイス、ジョーとハーバー。こうして2組のカップルは出会うことになる。そして…。>>>つづきはDVDでどうぞ!

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Angels in America/1



















 『エンジェルス・イン・アメリカ』は、アメリカ・HBOが“一大テレビ・イベント”として制作したミニ・シリーズドラマ。DVDのパッケージは、宗教系ファンタジーのようなデザインだが、騙されてはいけない。内容はとんでもなく衝撃的!!、過激で刺激的!!。でも、なんとも優しい気配に満ちている。

 天使のイメージだが、日本では絵本やクリスマスのイメージがある。宗教的には保守王国アメリカでは、リアルな存在として認識している人が多い。日本で言えば、東京スポーツ的な新聞では、天使が人助けしたニュースは、珍しくない。守護天使は、誰にでも、どの国にもいて、人間を助け、見守っている。だが、本作の天使は少し違うようだ。

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 出演者筆頭に“アル・パチーノ”の名前が並ぶが、彼が主演ではない。本作『エンジェルス・イン・アメリカ』は若い2つのカップルの愛の行方を描いたもの。“アル・パチーノ”、“メリル・ストリープ”、“エマ・トンプソン”と、アメリカ映画を代表する名優、名女優が脇を堅めている。同名の原作はロンドンのナショナル・シアター選んだ“20世紀の最も偉大な戯曲10本”に名を列ね、“ピュリツァー賞”“トニー賞”を受賞している。

 物語の重要なファクターにアメリカ人の宗教観がある。ルイスはユダヤ教徒、ジョーはモルモン教徒、ルイスはカソリックだ。他のアメリカ人同様に移住で新大陸に来た。故国なら出会うはずのない三人の共通項は、同性愛者だと言うこと。日本は男性の同性愛にはどこか寛容の空気がある。だが、厳格なユダヤ教、モルモン教では、勿論同性愛は背徳的行為と言うことになる。そんな肩身の狭い彼等の前に、未知の病原体エイズが侵入してくる。1980年代は、まだ有効な治療法も確立していなかった。「エイズは同性愛者だけがかかる癌」と言う、過った風聞もあり、エイズ=天罰のような過った考えもあったようだ。

 そのエイズに罹患したブライアーのもとに、神の使者が訪れる。彼(天使は中性)は言う。「我はアメリカの天使、白頭鷲の天使なり。」、「汝に預言の書を与える」。神に選ばれたブライアーは、瀕死状態から元気になっていくが、この天使の迷惑なこと!「愛欲に耽るな諸天使を神が見放した」と奇妙なことを言い出す。本当の天使なのか?エイズに冒されたブライアーの妄想なのか?、定かではない。

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 幻覚はブライアーだけではない。やはりエイズに冒されているロイのもとにも多くの亡霊が現れ、彼を悩ます。ジョーの妻ハーバーには、謎の旅行会社プランナーが現れる。現実と幻覚が交差し、物語は不思議な世界を形作っていく。

 息子から同性愛者だと告白されたジョーの母は、ユタ州ソルトレイクの家を売って上京、ニューヨーク・モルモン・ビジターセンターに身を寄せる。息子ジョーはルイスと同棲を始め、夫に愛想を尽かしたハーバーは幻想の南極>真冬の公園に住み出す。ついでに焚き火をし、植物園の木を燃やし警官に逮捕される。結局、ジョーの母と妻はモルモン・ビジターセンターに居着いてしまうのだが、ここでハーバーが移民人形の妻と話す台詞が秀逸。「穢い爪で腹を切り裂き、はらわたをえぐり出す。そして、またはらわたを中に入れる。そんな苦痛の中で…、。」神の意志は人知の外、独特の比喩で語っている。このシーンは大事なので、見逃せない。

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 ブライアーの親友で、同性愛者の看護士がいる。ルイスが、夜明けの空を「パープル」と表現した時、彼が「あれは、モーブよ。ゲイのくせに」と言う。一番、好きな台詞だ。人生で最悪の状況に陥った時、人は何を求めるのか?誰が救済をもたらすのか?“至福千年紀”は本当に近付いたのか?最後は、奇妙な至福感に満たされる。

 共和党をとことんけなす台詞は痛快!シニカルな笑いが好きな人に必見の名作!!

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バセスラ・テラス

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June 16, 2008

楽園の崩壊と、新世界の侵略/『アポリカプト』4

アポリカプト/1





















●アポリカプト/Apocalypto●
●監督・脚本;メル・ギブソン
●出演; ルディ・ヤングブラッド
●DATA;アメリカ/言語マヤ語/2006/138分/R-15指定

 アメリカの公開日は2006年12月8日。ファミリー映画が多いクリスマス・シーズンにこんなハード(!)な作品を公開するメル・ギブソンも相当にタフだ。『キリング・フィールド』を凌ぐ衝撃性!、未見の人、とくに若い人や女性は、無理に見ない方が良いかもしれない。あらすじと感想など…。

●あらすじ

 西暦1517年頃、中南米の密林、仕掛けられた罠に獣がしとめられる。歓声を上げ獲物を解体する彼等は、密林に住む部族の若者たち。部族長の息子“ジャガー・パウ”は、新婚だがまだ子供に恵まれない幼馴染みの青年をからかい、喧嘩になる。そんな様子を皆で大笑いして囃す彼等は、平和だった。密林の奥から、負傷した他部族の青年たちが逃げてくる。彼等のただ事ではない様子に、不安を感じたジャガー・パウ。獲物を持ち、家族の待つ村に帰っていく。

 村では、妻や子供、父が待っていた。他の仲間の家族も、獲物の到着に大喜び、幸せな夜を迎える。しかし、侵略者の影が村を狙っていたのに、誰も気づくものはいなかった。夜明け前、皆寝静まったいた。突如、村は教われ、多くの村人は殺される。ジャガー・パウは臨月の妻を穴の底に隠し、皆を助けるために、闘いを挑む。しかし、武装した略奪者にかなう筈もなく、生け捕りにされる。生き残った村人、数十名余は、数珠つなぎにされ、川を渡り、山を越え、王都に向かう。途中、疫病で死に絶えた村があり、謎の少女が予言をした。それは…。>>>悪夢を見る覚悟のある人、つづきはDVDでどうぞ!

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アポリカプト/2
 2008年5月、アマゾンで未文明の部族が発見され、話題になった。本作の主人公、森の継承者ジャガー・パウの子孫のように感じた。先進国が歯の良い白アリのように地球資源を食い尽くそうとしている21世紀。未発見の森の部族の存在は、不思議な暗示を感じる。

 本作は、ニュー・エイジ的な傾向を持つメル・ギブソン監督の『黙示録的世界観』を描いた作品。評論では、「マヤ文明を過って描いている」との批判も多い。さまざま混合し、中心は“一の葦、白い肌の神ケツァルコアトル神”の伝説を持つ、アステカ文明の最後を描いた作品だと思う。

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 アステカ、マヤ両文明には、凄惨な生け贄の儀式があった。太陽神に活力を与えるために、儀式方法は違っても、乙女、捕虜や奴隷が、太陽への捧げものにされている。本作では、その凄惨な神事をグロテスクに再現。もう〜、とんでもなく残酷だ。マヤ文明や、アステカ文明の遺物展を観たことのある人は覚えているだろうか?顔の中に顔のある仮面を。

 何気なく観ていたのだが、あれは、神官が生け贄にした犠牲者の生革を剥ぎ、それを被って踊る様子を表現した仮面。ピラミッドの前の競技場では、首をボールにサッカーをしたり、負けたら、次ぎの生け贄だったり…。この500年前の国々は、なんだかとんでもなく悪魔的な側面を持っていた。

 西洋文化に侵略されることにより、悪しき生け贄の儀式は、王家の滅亡と一緒に絶えることになる。今は密林に埋もれた、壮麗なピラミッドや遺跡を呑気に見ることが出来ても、刻まれた歴史とは惨いものだ。やはり、密林と云う過酷な環境に住む故の、食料不足や、疫病の蔓延などが、こんな人口抑制筴を招いたのかもしれない。

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 神と勘違いして招いたエルナン・コルテスが“生け贄禁止令”を出したのが1519年。それでさえ、新たな侵略者との戦闘の始まりでしかなく、中南米の悲劇はまだまだつづく。

 メキシコは、カソリック的には特別な霊地であるらしく、今は、現地風俗と混合したマリア信仰や、ミイラ墓など、不思議な宗教地盤を守っている。小動物の殺生さえ禁じた歴史を持つ日本のようなノウテンキな国とは、比べようもない過酷な歴史だ。

 そのマヤ文明が予告する、世界の終末。それが、あと数年後に迫っている。諸説あるが、2012年12月23日、マヤ歴の終わりになっている。マヤの考え方なら、我々は新しい太陽の誕生を待つしかない。

 現在の地球温暖化は、太陽活動の活発化も要因の1つであり、縄文時代の地球、恐竜時代の地球などに比べれば、まだまだ小氷河期の終わり程度の気温推移らしい。次ぎに生まれる太陽が、どんな気候をもたらすか?答えは、もうすぐ出る…。

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 セリフはマヤ語、全編を覆う濃密な密林の空気と、凄惨な血の味。ある種の映画の頂点だと思う。危険!取り扱い注意!な問題作。

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アポリカプト/3




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June 14, 2008

あり得る未来…、21世紀の黙示録!?/『トゥモロー・ワールド』5

トゥモロー・ワールド/1




















●トゥモロー・ワールド●
●原題;CHILDREN OF MEN
●原作; P・D・ジェイムズ
●監督;アルフォンソ・キュアロン
●出演;クライヴ・オーウェン/ジュリアン・ムーア/マイケル・ケイン/
    キウェテル・イジョフォー/チャーリー・ハナムア 他
●DATE;2006年 アメリカ/イギリス 109分

 極限の少子化問題を描いた作品。世界の終末を、戦争で描いたものが多い中、本作は静かな滅びを描いている。邦題が英語風に『明日の世界/tomorrow world』に比べ、原題はストレートに『人間の子供/CHILDREN OF MEN』。

●あらすじ

 西暦2027年、荒れ果てた雰囲気の漂うロンドン。さえない顔の中年男がコーヒーショップでブラックを注文する。男はセオ、かつては社会活動家だったが、いまはしがない公務員だ。店のテレビでは、世界最年少の18才の少年がファンに殺害されたニュースが流れる。握手を求めたファンに悪態をつき刺殺された彼は、子供が生まれなくなった世界で一番若い人間だった。世界中で悲嘆にくれるファンの姿に、セオは嘆息をつき店を後にする。セオが店を離れた途端、店は何者かによって爆破され、多くの通行人が倒れた。あやうく難を逃れたセオが役所に着いても仕事をする気にならない。最年少の人類殺害のニュースを口実に仕事を早退する。

 セオは鬱病の治療を受けていた。唯一の慰めは森の中に棲む老夫婦を訪ねることだけだった。彼はかつては高名なジャーナリストだったが、今はドラッグを販売しながら、心を閉ざした妻、愛犬と一緒に隠れて暮らしていた。変な味のドラッグを試し、たわいのないジョークで笑いながらも、二人は深い悲しみの中にいた。

 世界は18年前から、子供が生まれていなかった。不可解な不妊が広がり、妊娠中の妊婦は流産し、新生児は誕生していない。子供の生まれないことの異常さから、世界は荒廃していった。社会機構は崩れ、辛うじてセオの暮らすイギリスだけが政府が維持されていた。そのイギリスに世界中からの難民が押し寄せ、難民は強制収容所に隔離されていた。

 そんなある日、セオはフィッシュと呼ばれるテロリストたちに誘拐されてしまう。セオのかつての妻ジュリアンは今はフィッシュのリーダーだった。ひさしぶりに会った妻からセオは国内移動用の許可証の依頼される。目的は不法滞在の難民の女性を移動させるためだった。>>>つづきはDVDでどうぞ!!面白い!!デス。

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トゥモロー・ワールド/2
 本作『トゥモロー・ワールド』は、一昨年、ヒットした『Vフォーヴァンデッタ』と似た構造の近未来SFだ。『Vフォーヴァンデッタ』ほど話題にならなかったが、『トゥモロー・ワールド』は『Vフォーヴァンデッタ』以上に強いインパクトがある。

 舞台は20年後のイギリス、世界はイギリス以外は崩壊しており、イギリス政府は特異な管理社会になっている。家族を失い失望の中で暮らす主人公、『V』では謎のウィルスでの大量死、『トゥモロー・ワールド』では世界規模での不妊…。2作とも極めて暗示的で、黙示録的でもある。黙示録的と云う場合、それは「神から与えられたヴィッジョン」と云う意味でだ。欧米の映画を見る時に、欧米の文化基盤になっているキリスト教の精神を感じざるを得ない。

 『V』以上に、『トゥモロー・ワールド』は聖書的であり、リアルで衝撃的だ。どんどん進み小子化、その原因の1つは構造的な新貧困層の拡大、それに加えて環境ホルモンによる人類の不妊化も加わっている。健康ブームに隠れているが、環境汚染による人類の染色体の異常発生率、生殖能力の低下はどんどん加速している。政府は、メタボリックシンドローム予防などで、健康延命を奨励しているは、人類が長命を望むほど世界は調和が保たれているか?それははなはだ疑問!!!

 その意味で『トゥモロー・ワールド』は実にリアルだ。

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 映画の見どころはクライマックス、6分を超える長回し。セオは人類の希望を託す女性セオを守るために市街戦の中を逃げ回る。途中、カメラに血しぶきが付き、レンズが爆風の粉塵で汚れていく。観客はいつしかカメラマンの目になって、その場にいるような臨場感に酩酊するような錯覚に陥るのだ。圧倒的な迫力に、映画の力を実感するとともに、セオが誰に傷つけないことにこの映画の深いテーマを思い知ることになる。深い霧の中、船を待つセオとキー…、動かないセオは死んでいるのか、生きているのか、我々は知ることが出来ない。ただ1つ言えることは、セオは充実感、達成感を感じているだろうと云うこと。

 人は何のために生きるのか?

 そのことを感じざるを得ない。『トゥモロー・ワールド』は、決して空想だけの世界ではなく、今、現在と地続きの可能性を含んだ物語だ。子供のいない世界で、多くの人が犬を飼っているのが印象的だった。


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June 11, 2008

怒れる神の鉄槌!!それは隕石〜!/『アポカリプス 地球最後の日』3

地球最後の日





●アポカリプス 地球最後の日●

●監督;ジャスティン・ジョーンズ
●脚本;デヴィッド・マイケル・ラット
●出演;レット・ガイルズ/
    ジル・ステイプリー/
    トム・ナゲル/
    クリステン・クイントラル
●DATA; アメリカ/2007年






 巨大隕石激突による人類滅亡もの。巨大隕石は、パニックものの大定番。ハリウッド映画制作者たちは、大作を始め『ディープ・インパクト』『アルマゲドン』『アステロイド 世界崩壊の日 巨大隕石激突』など、手を替え、品(?)を変え、隕石を地球に衝突させる。隕石映画は、科学的な現実味をベースにしているのに、本作だけは、奇妙に宗教的な設定になっている。で、『黙示録的世界』に分類。あらすじと感想は…。

●あらすじ

 キャンプ場で歓談する男女。一人が小用を足しに木陰に入る。空から火球が襲い、彼は消滅する。次ぎ次ぎと落下する火球、それは地球軌道を横切る隕石群の始まりだった。

 カリフォルニア州モントレー郊外、森林レンジャーのジェイソンは仲間とパトロール中に、奇妙な降灰に驚く。謎の物体がモントレー市街に墜落したことを知った二人は、町の様子が気になる。奇妙な現象は続き、帰宅途中の同僚は犬とともに消えてしまう。娘の安否が気になっているジェイソン、そこに元妻アシュリーが来る。二人は、一人息子の病死の悲しみから不仲になり離婚していた。妻は、ロサンゼルスに住む娘リンジーのもとに一緒に行くように、ジェイソンに懇願する。

 車に乗った途端、大きな火球が墜落。二人は只事ではない危険を感じていた。道路を急ぐジェイソンとアシュリー、不思議なことに、路上に乗り捨てられた車には、人影がない。次ぎ次ぎ起る異常気象、地割れ、竜巻が二人を襲う。信仰深いアシュリーは、何故か、神のみわざを感じていた。車を失った二人は…。>>>つづきはDVDでどうぞ!

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 仮定だが、太陽系の外縁には“オールトの雲”と呼ばれる天体群がある。惑星になりそこなった岩石や、メタンや水、2酸化炭素を含んだ氷などが、太陽の引力で捕らえられているのだ。その質量は大きく、太陽系最大の惑星“木星”ほどもあると云う。“オールトの雲”と繋がるように海王星の外側には“エッジワース・ベルト”があり、ここは短期周期彗星の故里と云われている。

 地球がまだ地球でなかった頃、原始太陽の周辺では微惑星が衝突を繰り返しながら、現在の惑星の質量まで育っていったと云う。これは神話的な説だが、4000年前、金星は木星から飛び出て、今の軌道に収まったと云うのだが、これは意外と本当っぽい。金星級とは云わないまでも、ほんの数キロの大きさの隕石が地球に落ちたら、現在の文明社会は壊滅してしまうだろう。衛星写真で見る地球映像には、月のクレーターのような衝突痕がいくつも見つかる。北米やユカタン半島の隕石落下痕は有名だ。

 2004年5/21日付の“NASA News”によると、

 NASAと米国立科学基金によって設立されたリサーチプロジェクトチームの発表によれば「2億5000万年前に生物の大量絶滅(海洋生物90%、陸上生物80%)の原因隕石は、オーストラリア北西沖の海底に落下したものと裏付ける証拠を発見」と報道した。この隕石の落下痕(クレーター)の直系は200kmになる。6500万年前、恐竜絶滅を引き起こした隕石は、メキシコ・ユカタン半島に落下したものと云われている。

 大絶滅を起こすような巨大隕石が、地球に落下する確率は100万年に1回とも、壊滅的な気象変動を起こす隕石落下は、2600万年の周期(5億7000万年に6度あった)とも、地質学や化石資料から推測されている(!)。

 長々と脱線したが、預言者たちによると、そろそろ落ちる(?)の周期が巡っているらしい。誤差は数万年〜1億年程度あるので、杞憂なことなのだが(笑)。

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 本作『アポカリプス 地球最後の日』だが、黙示録による最終戦争を巨大隕石に置き換えた作品。物理的な死以外に、神のよる消滅が加わっている。カソリックなどのキリスト教墓が土葬がほとんどの理由の1つは、最後の審判の時、キリストが再臨し、すべての死者が蘇り、審判の席につくことに由来する。良き人は、蘇った肉体のまま、永遠の生命を受け、天の国の住人になる。タロットカードの“最後の審判”には、天使トランペッターと、墓から蘇る死者が描かれる。非科学的な宗教観だが、この幻想がハリウッド映画界には、ハズレのないネタらしい。

 最初は、火球の衝突でキャンパーが焼け死ぬまでは、普通のパニック映画と思っていた。ところが、離婚した元妻が現れてから、ロサンゼルスに移動する車での宗教っぽい会話がえんえんと続く。会話は婉曲だが、元妻は夫を責める。幼い息子が死んだのは、夫の信仰が足りないからだと。この妻に『ヨブ記』を読ませたい(笑)。 ロサンゼルスにいる娘は、部屋にボーイフレンドを招きベタベタ、ハウス・シェアしている女友達のひんしゅくを買っている。ところが故郷に隕石が落下したと聞くと、ボーイフレンドと教会に行き、「ワタシッテ、ジツハ」と、信者さんなのを告白。ボーイフレンドは、焦りまくる。


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 結局、この映画は、SFだと思って見る一般人に、キリスト教を布教する下手なサブリミナル映画のようだ(汗)。

映画の宣伝用リードは

『巨大なアステロイドが地球に接近し、ロサンゼルスの高層ビルなどがつぎつぎと崩壊していく…。隕石群・竜巻地震・津波など、驚愕のVFXで魅せる大都市崩壊ディザスター・ムービー!』

 これを書いた宣伝マンに「ウッソダ〜イ!!」と云いたい。期待したわりに驚愕しないし、VFXもてんでショボイ。それに『地球最後の日』の日本語タイトルも、あれしきの隕石で地球は粉々にならないと思う(爆)。

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 悪口&悪たれを書いたが、ポテチや煎餅を食べながら、気楽に見るとソコソコ楽しいB級映画。また、日本とは違う宗教風土を考えるには、貴重なテキストになると思う。

 健気なボーイフレンドに1票!!

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June 10, 2008

無音の未来…、こんな明日はイヤだ!/『エンド・オブ・ザ・ワールド』4

onthebaech/1
●エンド・オブ・ザ・ワールド 完全版●
●監督: ラッセル・マルケイ
●出演:アーマンド・アサンテ/レイチェル・ウォード/ブライアン・ブラウン/グラント・バウラー
●DVD発売日: 2001/2/23  時間: 208 分

 レンタル店の棚に『人類絶滅コーナー』がある(笑)。端から見ようと思っているのだが、このジャンルはB級作品が多く、当りはずれが多い。本作は1959年に作られた『渚にて』のリメイク作品。往年の名優グレゴリー・ペックが主演している。古い映画で、さすが(?)に未見だ。パッケージにあった滅亡の巨匠(!)小松左京さんの推薦文に惹かれて借りたのだが…。

●あらすじ

 2006年、中国が台湾封鎖を強行する。国連やアメリカが抗議するが、中国の態度は硬化。ついに両国間で核弾頭の発射ボタンが押された。結果、北半球は核汚染され、地上生物は絶滅してしまう。米海軍潜水艦スコーピオン号は、海中にいたため被爆を避けることが出来る。彼等の目指すのは、まだ放射能汚染が達していないオーストラリア・メルボルン。潜水艦内でのデータ解析では、赤道高地から放射能が流れ出し、南半球の生物生存限界は数カ月後と言うことだった。

 メルボルンに向かう途中、スコーピオン号は豪政府の命令で、孤島で死を待つ大気学者を強引に同行する。彼は汚染が南半球にも及びことを確信しており、恋人とも別れ、飲んだくれていたのだ。オーストラリアでは北の地方はすでに危険レベルに達していた。また原油国の壊滅によりガソリンは枯渇、町は北からの避難民と、一般市民の暴徒化で荒れ果てていた。郊外に住む海軍士官ピーターは建築家の妻メアリーと幼い娘との三人暮し。妻は汚染報道を信じることが出来ず、家の改装に熱中していた。

 ある大気学者が「北緯60度以北に放射能汚染濃度が低い場所がある」と推測。その証拠に北から定期的に電子メールが発信されていると言う。上陸したスコーピオン号に新しい任務が下される。それは、孤島にいた大気学者オズボーンと豪海軍士官ピーターを乗艦させ、「北に調査に向かう」と言うものだった。オーストラリアが壊滅するまで数カ月、政府の狙いは地球上に汚染されていない場所を探し、1000人の男女を移住させると言うもの。輸送に使えるのは高性能潜水艦のスコーピオン号しかなかったのだ。果たして、北緯60度以北に人類は生存しているのか?スコーピオン号の見たものは?>>>つづきはDVDでどうぞ!!

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 長い!3時間半の完全版!この長さは、「どれもカット出来ない必要なシーンだったから」と思える。そして繰り返し見てしまう切なさがある。本作は、パニック映画ではない。死を前にして、愛する家族とどう過ごすか?人は絶望を前にどんな行動を取るのか?実に濃厚な人間ドラマなのだ。
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 しかし、頂けないのは日本語版DVDのパッケージ。退屈なパニック映画しか想像できない自由の女神とニューヨークの廃虚のイラスト。こんなシーンは何処にもない(!)。原題も『On The Beach/渚にて』、『世界の終わり=End of the world』なんて直接的なものではない。この題名を見ただけでも販売元のミスリードを感じない訳にはいかない。ネビル・シュートの原作が読みたくなってamazonで探したら絶版。なんと数百円の創元社SF文庫が四千円以上の価格になっていた。よく探したら千円以内で買えるものが見つかったので注文した。読了後、また感想を書き加えたい。

◆◆◆

 物語は放射能汚染で死滅していく世界とともに、スコーピオン号の艦長タワーズとオーストラリア士官ピーターの義姉(妻の姉)のラブロマンスを追って行く。また家族愛のあり方としてピーター一家の日常や、潜水艦乗り組み員の日常も丁寧に描かれる。

 彼等は最後の日まで、理性と誇りを失わない理想的な人々だ。軍と言う疑似ファミリーがスコーピオン号の乗り組み員の心を支えている。彼等の家族は皆、死んでいる…。理性的な物語の主要人物と対照的に描かれるのは、暴徒たちだ。商店から品物を略奪し、食料の奪い合いから路上では殺しあいが始まる。それを冷静に見ているタワーズやピーターは、機密の情報を知っているので、不安の先にある絶望を持っている。どんな風に死ぬか?それだけが、最後の目標になるのは本当に辛い…。

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onthebeach/2
 この作品を面白いと思えるか否か?

 決して面白い作品ではない。暗いし、重い!!絵空事?と思えば、あり得ないことじゃない恐怖!現在、北朝鮮の核弾頭保有問題が、東アジアに緊張をもたらしている。中国、インド、ロシア、パキスタンetc.皆核弾頭と持っている。原子力発電所があり、専門知識があれば核爆弾は作れる。しかし、汚染された土壌は数万年の歳月でしか復元しないのだ。取りかえしの出来ない過ち!それは核による戦争に他ならない。コアラもカンガルーも出てこないが、ほ乳類もは虫類も皆死んで行くのだ。冷戦下に作られた、古い『渚にて』も探して観たいと思ったりする。

 原題の『渚にて』だが、人は海から陸に上がった。映画の終わりの果て、人類はもういなくなる。その風景に渚が一番似合っているように思うのが…。こんな未来はイヤだ!

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June 06, 2008

黙示録の獣は可愛い坊ちゃん!?/『オーメン666』5

ダミアン/1




















●オーメン666/THE OMEN●
●監督;ジョン・ムーア
●出演者;リーヴ・シュレイバー/ジュリア・スタイルズ/ミア・ファロー
●公開 2006年6月6日 110分 アメリカ映画
●DVD発売日;2006/11/3

『終末預言』を代表する映画と言ったら、『オーメン』は外せない。黙示録の獣は、ヒトラーとも言われるが、映画の中では、可愛いボウヤ?
 
●あらすじ

 世界は、黙示録の予言が次々と現実のものとなっていた。黙示録の悪魔“666の獣”がこの世に生まれ出ようとしている。それはキリストの千年王国を実現するために避けて通れない人類の試練なのか?バチカンの奥深く陰謀が始まっていた。

 ロバート・ソーン、大統領を縁戚に持つ若き外交官。赴任先のローマで、彼の新妻が出産を迎えていた。妻ケイトの出産を待っているソーンに、神父は「赤ちゃんは死産、二度と出産できない体になってしまった」と告げる。あまりのショックに茫然とするソーンに、神父はある提案をする。同じ時刻に生まれた「新生児の母が急死した」と神父は言った。神父に勧められるままに、身元不明の男の子を実子として受け取ることにするソーン…。ケイトはその事実を知らされず、自分の子供ではない赤ちゃんに頬ずりをして喜ぶのだった。

 赤ちゃんはダミアンと名付けられ、夫妻の庇護下、すくすくと育っていた。ダミアンが4才になった頃、ソーンはイギリスへの赴任が決まる。ところが、駐英大使が着任直前に、不慮の事故で急死、ソーンは異例の抜擢で駐英大使となる。夫の出世を喜んだケイトは、ソーンが驚くような大きな邸宅を借りることにするのだった。

 その豪邸の庭で、ダミアン5才の誕生パーティが盛大に開かれる。多くの招待客で賑わうガーデン・パーティの会場、庭を見下ろす屋上にダミアンの乳母が立っていた。首に縄を巻き付けた彼女は、大きな声でダミアンを呼び、そして…。つづきは>>>DVDでどうぞ!。

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ダミアン/2


















 1976年版の『オーメン』は幾度となくTV放映され、30才以上の日本人は一度は目にしている大ヒット作だ。シリーズ作品 『オーメン2/ダミアン(DAMIEN: OMEN II、1978年)』 『オーメン/最後の闘争(THE FINAL CONFLICT、1981年)』も、深夜枠のTV放映で幾度も見た。

 最初の『オーメン』から30年も経過している方が、個人的には恐怖(笑)だ!?この頃のアメリカ映画は、悪魔主義に取りつかれたように良質(?)なオカルト映画が目白押し。『ローズマリーの赤ちゃんRosemary's Baby(1968・米)』『エクソシスト』『オーメン』は悪魔系映画不朽の名作だと思う。

◆◆◆

ちょっと脱線するのだが、

 ロマン・ポランスキー監督(『ローズマリーの赤ちゃん』の監督の妻、臨月間近のシャロン・テートは、カルト集団の教祖チャールズ・マンソンに惨殺される。それは1969年8月8日だった。マンソンを凶行に走らせたきっかけの1つに、ビートルズの『ヘルタースケルター』という曲がある。白人と黒人の“最終戦争”をマンソンは『ヘルタースケルター』と呼び、狂信化&武装化していった。この事件は後日談があり、『ローズマリーの赤ちゃん』の撮影で使われたアパートが“ダコダハウス”。1980年にジョン・レノンが射殺された時に住んでいたあのアパートだ。

 “悪魔主義映画”の社会的背景を深読みすれば、ベトナム戦争だろう。悲惨な長期戦争は、アメリカ人の心を疲弊させる。その反動から“ラブ&ピース”のフラワー・ムーブメント(ヒッピー)が起きる。その中の一部の反社会的な若者は、フリーセックスとドラッグに走った。マンソンもその流れの中の一人だ。

 そしてベトナム帰還兵の一部にも麻薬が蔓延する。麻薬中毒者が社会問題化し、当時のアメリカは、国中がバット・トリップしていたのかもしれない。この麻薬中毒のロックミュージシャンとヒッピー・ムーヴメント、フワワーチルドレンのイメージは、前回紹介した『ローズ イン タイドランド』を鑑賞して欲しい。理想の末期が寂しい…。

 またグランドミレニアム直前のキリスト教圏は、黙示録の預言を恐れていた。チェルノブイリ原発の事故は、黙示録にある“ニガヨモギ=チェルノブイリ”と地名の偶然の一致を見る。「獣の復活の前に吹かれる、天使のラッパだ。“ハルマゲドン”のカウント・ダウンは始まった」…。と、根拠の薄い推測はさておき、『オーメン』のリメイクの感想に戻る。

◆◆◆

 本作『オーメン666』だが、やはり、グランドミレニアムが経過してしまった『オーメン』は、心理的プレッシャーが弱い。このグランドミレニアムを簡単に説明すると、西欧では2000年で動く春分点を一つの周期と考え、魚座に春分点があったキリスト生誕後の2000年をキリストの時代と考えていた。仏教にもあるように、末法の時代が2000年までだったのだ。これは『ノストラダムスの予言』にも重なり、社会不安を増大させていった。

 占星術師たちは反キリストの誕生を占い、1963年の6月生まれとしていた。生まれた場所は中東のどこか。この人物をされる写真を雑誌で見たことがあるが、反米の指導者として暗躍しているらしい(出典;ムー)。だから最初のダミアンの誕生は、実在の反キリストの誕生日に近いのだ。ブッシュ政権は、現在、イスラム圏と理不尽な戦争を泥沼化させている。彼の深層心理に、どこか『オーメン』の影響があるのではないかと?うがった考えを持ってしまう。

◆◆◆

ダミアン/3

 作品の中で、悪魔をイメージする画像がフラッシュ・バックされる。このイメージは極めてプリミティブで、アフリカや南大平洋の仮面のようだったりする。マンソンが妄想したように、白色人種と有色人種の間の戦いが“最終戦争”の正体だとしたら、本当に怖い。

 日本人はアメリカに対して極めて服従的であり、バナナ(見た目は黄色いが中身は白い)と悪口を言われている。アメリカがキリストの教え『隣人を愛せよ』『左の頬を打たれたら、右の頬を出せ』を守っているのか?と言えば、はなはだ疑問だ。以前も書いたが、悪魔とされる偶像は、旧世界の大母神だったり、自然神だったりする。※仏教の明王像はどうみたって悪魔だ(汗)。

 ダミアンのことで言えば、生物学的にジャッカルが人間の子供を産むわけがない(笑)。

 ジャッカルや犬は、欧米規範に不服従のダイナミックな自然のパワーを象徴しているのかもしれない。(正統派ではない)キリスト教カルトは、どこか“ハルマゲドン=最終戦争”を待ち望んでいる。

そんなものはない。

 それより環境問題で人類は滅亡する可能性がどんどん高くなっている。その時、空から天使が舞い降りるとは、とても考えられないのだった。

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May 31, 2008

グッド・トリップ!陶酔と幻惑を体験!!/『アズールとアスマール』5

アズールとアスマール/2















●アズールとアスマール●
●監督;ミッシェル・オスロ
●日本語版監修・翻訳・演出;高畑勲
●声の出演;シリル・ムラリ/カリム・ムリバ/ヒアム・アバス/
      パトリック・ティムジット/ファトマ=ベン・ケリル
●DATA;フランス/2006年/ 99 分

 以前、観て、心の中で反芻していた作品。三鷹のジブリ美術館で作品展も開かれた『アズールとアズマール』です。さきほど、頭痛で目が醒めて、夜明けに感想に書いている。書いていると、不思議と頭痛が治る(?)。美しい記憶は、病気を治すのかもしれない。もし、美しいものが好きな人が、この作品を未見なら、人生損をしているかもしれない。さて、簡単なあらすじなど…。

●あらすじ

 ヨーロッパのどこか。領主の息子アズールは母を亡くし、アラビア人の美しい乳母ジェナヌに育てられていた。ジェナヌの子アスマールは、アズールと同じ年。二人は、優しいジェナヌの子守唄を聴いて兄弟のように育つ。子守唄は“ジンの妖精”のことを歌っていた。遠いアラビアのどこかに、閉じ込められている美しい姫君…。アズールとアスマールは、大きくなったら“ジンの妖精”を救って自由にしよう!と、冒険を夢見るようになる。

 月日は経ち、アズールの父は、領主らしい教育を施そうとする。兄弟同様に育った二人なのに、乳母の子、アスマールは見ているだけ。父の命令で、寝室も一緒ではなくなった。なんでも一緒だったのに、身分で分けられるようになった二人。仲が良いのに、ケンカばかりするように。それを見た領主は、乳母とアスマールを追い出してしまう。アズールも町の教師の家に…。そして歳月は過ぎた。>>>つづきはDVDでそうぞ!!

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 美しいアニメーション作品を最初に見た記憶は、ソビエト連邦の作品『雪の女王』だった。女王の美しいシーンはいつも脳裏に潜んでいる。本作『アズールとアスマール』を、人生の最初に見ることのできる子供は、幸せだ。何故なら、思い出すことのできる美しい記憶の1つが、アズールとアスマールの冒険だから。

 と、ジブリの宣伝担当のように書き出してしまった(汗)。でも、本音なので、仕方ない。本作『アズールとアスマール』は、特別、胸踊るようなハラハラどきどきなストーリーはない。心に響く言葉やシーンは人それぞれ。本作の感動の有無は、作品とヒトとの縁のように思う。

 ジブリのキャッチ・コピーは
   “海の向こうは、不可思議の国だった。”

 『アズールとアズマール』は、響きの綺麗なフランス語とアラビア語で語られる。フランス語には字幕はつくが、アラビア語には字幕はない(DVDには字幕付きも収録されている)。アラビア語に字幕がないのが、本作品では重要な要素になっている。美しい絵と一緒に、音楽のようにアラビア語を聴くのは心地良く、遠く異国を旅しているようだ。



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 本作は、スキャナーで取り込んだ精密な手描きや、写真などの画像データを駆使した背景が特徴的だ。その背景に、ノスタルジックなプロポーションをした3CGのキャラクターが動く。背景だが、どこまで拡大しても大丈夫で、細胞まで描いてあるような錯覚を起こす。それほど、植物や建物、市場の果物など、微細に、精密に描かれている。それに比べ、人物は意外とあっさり、切り絵のようにシンプルだ。人物の味わいは、萩尾望都さんの絵や、物惣冬美さんの絵のようで、少女漫画チックな可憐さがある。

 ヨーロッパのシーンでは、豊かな自然がナチュラルな色彩で、アラビアのシーンでは、ビビットで濃密な空間が描かれる。どのシーンも、あまりの美しさに目眩が起りそうになる。大きな画面で見たら、トリップしてしまうかも…。それほど幻惑的な映像美が追求されている。絵の勉強をしている人には、大きな刺激になると思う。

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 ジブリのサイトで、本作の字幕翻訳も手掛けたプロデューサー高畑勲さんが、詳細な解説を書いている(http://www.ghibli-museum.jp/azur/critique/)。他、物語あらすじや多数画像もあるので、是非、ご訪問ください。

 アズールはドチだし、アスマールは頑固だ、子供っぽいやりとりも多いが、小さい子は自分のことのように感じるだろう。大人の観客には、なじめない展開もあるかもしれない。だから、どうした?的な、理屈、刺激や展開を、本作に求めると、思考の迷路に迷い込んでしまうかもしれない。豊かなお伽話の底には、真理が潜んでいる。本作にも、あなどれない強いメッセージ性が隠れていた。これを見た子供たちが、異文化、異言語に興味を持ち、美しいものを愛する心を宿してくれたら、監督の意図は大成功だろう。制作者として、こんなに幸せなことはない。

 綺麗なものが好きなすべての人と、すべての子供にお薦め!!
 全国の幼稚園、保育園、小学校で必見作品!!

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アズールとアスマール/1

moondrop_aco at 04:27|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)

May 20, 2008

2008/May /『画家映画特集』

今月は『画家映画特集』。続きを読む

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